ともかく良い
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片山っていう人はなんて良い人なんでしょうか。博覧強記というだけではなく文章の構成もいいし、そして語り口がこの人独特のものがあります。
このCDは少し前に出たものでした、CDの冒頭には黛さんのエッセーが添えられております。黛さんも多分最晩年に近かったのではないでしょうか。いわば、日本が最後の「いいとき」をすごしていた、本当の末期の瞬間に登場したCDだったのでしょう。
その伊福部の初期の管弦楽作品ですね。日本狂詩曲の第2楽章は記念碑的な作品です。伊福部先生の著書「管弦楽法」上巻の冒頭近くにこの曲の第2楽章が掲載されていたのを見たとき、その鮮やかな作法に感激したことがあります。音楽的な情報の限られていた時代にこれほどの管弦楽法を独学で身につけていた伊福部という人の恐ろしさを改めて思い知らされる強烈な音楽です。さて録音ですが、広上淳一(この人の好き嫌いは別として)の指揮でこの作品は生まれ変わりました。このテンポは良いです。もちろん過去の演奏も秀演が多かったのですが、この演奏は納得感があります。ダイナミックの変化も秀逸です。いずれにしてもこのCDは不覚にも最近まで認識をしていなかったのですが、やはりもっと前に知っておきたかった演奏でした。是非
日本人としての"血"を描いた作曲家。
★★★★★
伊福部昭の生前、キングレコード社(ファイアバード)がやってくれた!
今まで、まともに聴けなかった作品などを新録するなど、伊福部昭監修と云う事も相まって、名演。
しかしそこらへんがスタジオ録音の常か、熱気が薄いなど、丁寧過ぎるだとか、
そんな事じゃぁ、伊福部昭は語れない!
広上先生はとんでもない人だ。
日本狂詩曲での安定したテンポや細部への気配り、
土俗的三連画でのテンポはやや不安定だが、完璧な演奏、
交響譚詩では昭先生曰く、「元気の無い音楽」との事だが、
広上先生はそこらへんを表現したのか、乾燥した演奏に仕上がっている。
この三つの傑作を、完成した演奏で聴けるのはすごい。
伊福部昭に最近ハマったと云う方に、このシリーズをお勧めする。
これもひとつの「伊福部」
★★★★★
「演奏が上品過ぎる」とか「熱気が無い」などと言われることのあるこのシリーズだが、
このような演奏もひとつの形ではないだろうか。
日本狂詩曲は、確かに少々上品過ぎるきらいはあるが、個々の楽器の表情を引き出した
非常に繊細な演奏に仕上がっている。
交響譚詩は指揮者である広上淳一氏が「一番のお気に入り」という作品だけあって、
決して暴走することは無いが、作曲者・指揮者・演奏者の情熱が滲み出ている。
60年以上前に既に日本にこのような作品があったことは、誇りだと思う。
決定版
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数ある伊福部氏の管弦楽作品集でも最も優れた演奏ではないかと思います。もちろんたまに気になる演奏のキズらしきものも聞こえますが、それを覆い隠すぐらいの気品にあふれた演奏です。楽曲の土俗性と演奏の品格のブレンドがすばらしい。とくに「土俗的三連画」の演奏はこの楽曲の決定打と言えます。