伊福部昭の素晴らしき世界
★★★★★
シンフォニア・タプカーラ、別名「タプカーラ交響曲」は、伊福部さんの
唯一の交響曲と言われることがあります。彼の作品で最も素晴らしいものの
一つだと思います。私は第1楽章と第3楽章が迫力があって好きです。
アイヌ語の「タプカーラ」(大地を力強く踏みしめて踊る)の通りです。
また、曲全体に北海道の寒さと美しさが表れている気がします。
2曲目、「管弦楽のための日本組曲」は最も初期の曲「ピアノ組曲」を
1991年に管弦楽にしたものです。これまた踊りをテーマにしています。
迫力のある「盆踊り」、美しい「七夕」、愉快な「ながし(の芸人)」、
再び大迫力の「ねぶた」の4曲で構成されます。伊福部さんは踊りや祭りの音楽を
たくさん書いた人でした。
演奏については、コンサート(ライヴ)録音でないため迫力が足りないと
思う方もいると思います。しかし、ライヴでないのが「伊福部昭の芸術シリーズ」の
コンセプトだと思います。卒寿祝いは「特別編」でしたし。音質・音量は素晴らしく、
美しい曲は特に美しく感じられます。初めてタプカーラを聴く人にもおすすめします。
また、基本的にこのシリーズは作曲者監修で、かなり細かく指導したと言われています。
6月末に発売される「伊福部昭の芸術9」には、この2曲を含む日本フィルの
コンサート録音を聴くことができます。指揮者が違うため、特に日本組曲は、
このCDとは全く異なる雰囲気を持っています。聞き比べてみてください。
最後に一言。CDジャーナルは「バランの世界を彷彿とさせる」と書いていますが、
少なくとも「大怪獣バラン」のメインタイトルとは似ていません。