1980年代を素材に、「為替レートの変化は本当に経常収支の改善に影響を及ぼしたのか」、「為替理論に関する標準的なモデルは本当に正しいのか」といったテーマが論じられています。
検証と結論は実際に本を読んでもらうとして、ここで扱われているモデル(の核)は、例えばクルーグマン=オブズフェルドの国際経済学の教科書や、ブランシャール等の学部レベルのマクロ経済学の教科書に出てくるモデルにほんのちょっとだけ手を加えたもの(=本質はほとんど変わらない)なので、そういった本で勉強した人間にとっては、復習も兼ねて、とてもよい応用問題になります。
クルーグマンの文章も相変わらず読み易いですが、本の薄さを補うかのように(?)、訳者によってとても詳しくて気の効いた注釈が付いているので、多少知識に不安があっても安心して読むことが出来ます。
教科書はいわば(基礎的な)理論のエッセンス。こうして現実問題に当てはめることによって、そこにどれだけの叡智が含まれているのかを改めて知ることが出来たような気がしました。