肉親の書いた菊池寛の記録として、後世貴重な資料となると思います。
風呂場で「英樹、英樹！」と助けを求め、抱きかかえた妻に「お母さん、お母さん」とすがりつき、その後まもなく息を引きとったという。大堀医師が「九時十五分」と小声で臨終を知らせたこと。六友と云う書斎には、題名のない書きかけの原稿がそのままになっていた。
「親任と云う人の舅に、筑後の前司源の忠理と云う人があった。」で始まる歴史小説である。
　小説の書きかけのまま突然昇天したのも、いかにも菊池寛らしい。
一冊の本すべて、後世菊池寛研究の貴重な資料となるはずである。