魂を震撼させられる作品
★★★★★
素晴らしい文学作品。魂を震撼させられる!
(上巻から続くストーリー)主人公は、アパートの立ち退きに遭っている黒人の老夫婦を見て演説を行う。そこで演説の才能を認められ、政治的運動組織「ブラザーフッド協会」の一員になり、ハーレム地区の代表になる。だが、ここでの行動も、これまでの努力と同様に、挫かれてしまう。
アメリカ社会の中で苛烈な差別を受け、無視される黒人は、「見えない人間」という立場だった。著者による解説の言葉を借りると、「主人公は、若くて力はないが、失敗するよう運命づけられている指導(リーダー)という役割に野心的」に取り組んでいる。主人公は、志や野心を何度も挫かれるが、それでも走り続ける。
人種差別の問題を扱うだけではない、挑戦し、挫かれ、苦悩する人間の普遍的な姿が描かれている。心理や情景の描写も文学的に素晴らしいものが多い。
主人公は演説の能力を活かしてリーダーになろうとする。1952年に完全な形で出版された作品だが、その後のアメリカの公民権運動には、演説の上手いリーダー、マーティン・ルーサー・キングやマルコムXが現れている。そういう意味でも面白い作品。