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聖母(マドンナ)の深き淵 (角川文庫)

価格: ¥860
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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母性とジェンダー ★★★★★
前作が期待を上回る面白さだったが、こちらも
かなり面白い部類に入るミステリーだった。

リコ(緑子)が、母になりその心情に厚みを増している。

今回は、その母性とジャンダーがテーマ。
何を持ってして「男」なのか「女」なのか。
ハッキリとしているのは、体の創りではあるけども。

心と体が別々の「性」の人々が、少数ながらもいるという現実は
最近になって、マスコミでも取りざたされるようになり
全くの未知の世界ではなくなってはきている。

前回と同様に、人間の「業」の部分の表現が凄く旨い。
特に印象に残ったのは、
「失う物が何も無い者の強さと、守る者がいる者の強さ」の違い。

ストーリー的には、別々の事件だと思っていた
乳児誘拐事件や主婦惨殺事件と狙撃事件が
後半で絡まってくる様が、面白い。

乳児誘拐の担当刑事と、リコの鍋を一緒に食べた後の話の下りも
賛否両論があるようだけど、もの凄く切なくて 好きなシーンです。
リコの言葉や、城本の言葉の一つ々が切ない。
リコが恋愛感情ではなく、一瞬だけでも城本に惹かれたという意味が
何となく分かる気がします。

そして、麻生と山内の登場。
この2人は、脇にしてはあまりにも印象的で
ある意味、主役を喰ってる。
この2人を主に持ってきた話があると言うので成る程…と思いました。
「聖なる黒夜」絶対に読みます。

柴田さんの本の、一つ々の台詞が 凄く好きです。
刹那な、そして愛も棘もある台詞が泣けます。
女性性の更なる追求 ★★★☆☆
主人公緑子が母となって、前作『RIKO』より更に女性性の業の深さを軸とした事件を解決していく作品。
母になったこともあるのか、前作より主人公の人格設定が少し理解しやすくなっており(前回設定は“娼婦が誤って刑事になった女”でしたから…)、作品全体にリアリティーが生まれています。
現実を忘れてフィクションに溺れたい、と言う願望はあるにはあるんですが、リアリティーのある人物設定って、だからこそ重要なんだなぁ、と、この2作の読後感比較で認識を新たにしました。
とは言え、その時その時の感傷で恋愛関係にはない人物と依然として肉体関係を持つRIKOにどこまでも違和感…。
何故なら、その関係を持つ過程に説得力を感じないんです。勿論作者は主人公の心理をしっかり説明してはいるんですが、“説明的”なんですよ、どこまで行っても。無理くり感が否めません。
ただ、ここでようやっとヤクザの若頭である山内と、元刑事である探偵麻生が登場します。
脇としてしか存在していない彼らの泥沼の愛憎関係こそが、皮肉にもこの作品に独特の厚みを持たせています。
一冊で何度も美味しい ★★★★★
私は最初に聖なる黒夜を読んでからこの本を手に取ったので、山内と麻生にフォーカスを当てて読みました。この小説の中では脇役のはずなのに、彼ら二人のひとつのストーリーができあがってるように思いました。もうすっごく切なくて泣けました。聖なる黒夜を読んだ人には是非読んで欲しいし、この聖母の深き淵を読んだ人には聖なる〜を読んで欲しいです。

永遠の女神もそうでしたが、柴田さんのRIKOシリーズは刑事もののサスペンスなのに、完成度の高い純愛小説のような感じがします。いくつもの純愛の形があって、その一つ一つが幸せだったり、切なかったり、苦しかったり。そのへんの描写の上手さは女性作家ならではだなぁと思いました。推理小説やハードボイルド、純愛までも包括した一度で三度美味しい小説だと思います。

主人公の緑子も母になったことで、前巻とはまた違った強さと魅力が出てきたように思います。しかしやっぱり弱さもあって、そこがこの主人公の最大の魅力なのかもしれません。つぎの月神の浅き夢を読むのが楽しみです。
一気に読めてしまう面白さだったし、前巻ほど凄惨でもなかったので☆5つで。
せつないラスト ★★★★☆
まるで精密な設計図から精密な機械を作るように、組み立てられている。この作品を読んでそう感じた。一つ一つの出来事が、読む進めていくうちに、収まるところに収まっていく。読者はどんどん作品の中に引きずり込まれていく。警察官、母、女、さまざまな顔を見せながら奔走する緑子の姿は美しい。彼女は自分の弱さを知っている。知っているからこそ逆に強くなれる。
この作品の根底に流れるのは「愛」にほかならない。人は愛するものを守るためには、どんなことも厭わない。だが時には、それは悲劇を生む。事件が解決しても、それが決して人を救うことにはならない。ラストの描写の切なさが胸に残った。
いろんな事を伝えたいって!! ★★★★☆
吉木さんの溢れる思いにはじめて遭遇しました。いろんな溢れる想いを受け止めたいと思った1冊でした