知的ダンディズムの精神
★★★★☆
明治維新以降、敗者と言われた人々の群像。
著者の博学や文献の読み込み量に驚くが、敗者と言われた人々の人生を見る視点が暖かくユニークともいえる。但し、敗者とは言われているが、明治維新のパイにありつけなかった事が敗者とは思えない。それだけではなく、明治という近代化の波にものれなかった人々を指すのかと思えばそうではない。そちらかというと、ポスト・モダニズムに対して背を向けている人々なのかと思うとそうではない。
恐らく作者は出身地域や階層より、明治維新を基点とした「勝ち組」「負け組」で分けていると考えているが、このあたりはあまり共鳴できない。とはいえ、ポスト・モダニズムの意味として捉えて読むと、当時の文化人達の意識の高さや、知的遊び心がとても面白い。
イデオロギーには共鳴できないが、それでも一読をお勧めします。
浩瀚な資料に基づく反骨精神の日本近代史の精髄
★★★★★
明治維新で敗者の立場に立った徳川や戊辰同盟の側の日本人が、幕藩体制の中で反骨精神を貫いて生きた人間像と時代精神について、古書を中心にした幅広い資料に基づいて組み立てたパノラマ像は圧巻である。こうした地味な仕事を通じて組み立てられた明治の日本は、そこに生きた志を持った日本人の存在を浮き彫りにしている。日本の近代化の側面を知るという意味と共に、明治から対象リベラリズムの歴史を理解する上で、またとない得難い歴史の資料の宝庫だと言ってよい。こういった仕事の積み重ねが歴史の重みになるのであり、俗受けする靖国神社や歴史修正主義のインチキさを知るためにも、この本を読んで広い視野で歴史を捉えることを学んだら良いと思う。