薄くなる軍民の壁
★★★★☆
著者の言う通り、戦争はない方が良い。しかし、対抗力がないと今のガザのようにやられたい放題やられてしまう。自衛隊のイラク派遣で9条の「専守防衛」が危うくなっている、と著者は言う。人を殺す武器を作り、使う人は必要だし、著者の言葉を借りれば「武力を使って平和を作ってきた」戦後日本を支持する私は「武力を使わず平和を作る」べきという著者と考えは根本的に相容れない。しかし、著者のように誰かサイレンを鳴らす人は必要なんだと思う。
本書では、「軍」と「民」の関係が曖昧になり、様々な仕事が軍需になりうる危険をアピールする。軍需産業のすそ野の広さ(気象・民間航空も)を知ったほか、著者の懸念がまだ「懸念」で済んでいること(本書によると米仏には日本の30倍の軍需労働者がいる)にむしろ安心した。下地島空港の軍用化問題、米軍基地の労働の実態について、当事者によく取材していて、主張の当否はともかく、声がよく伝わった。