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子午線の祀り・沖縄―他一篇 (岩波文庫―木下順二戯曲選)

価格: ¥630
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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声にする言葉の美しさ、力強さ、素晴らしさ。読むだけではおしい作品。 ★★★★★
 木下順二さんがお亡くなりになられた。追悼の意もこめて、この作品を読み返す。
 作者は「夕鶴」など民話を題材としたもの、「沖縄」など戦争を扱ったものなど、多くの後世に残る戯曲を書かれたが、「子午線の祀り」は言葉、声の力・美しさを強く伝えてくれた作品である。

 平家物語を題材に、壇ノ浦の戦いの知盛を視点の中心に置いて、時の流れの中の人間・運命といった題材を描いた朗読劇。演技で動かすというよりは台詞・朗読で動いていくのが朗読劇であるが、この作品では「平家物語」の文章を使い、時には役者が独りで、時には数人で語る。例えば壇ノ浦で与一が「よっ引き固めてひょうと放つ」と独り語るところがあれば、数人の源氏の兵士が「差し詰め引き詰めさんざんに射ければー」と語るところもある。声、言葉の力・美しさが強く伝わってくる。どこかギリシャ悲劇のコロスの語りにも通じる、格調の高い傑作である。

 初演は1979年。この文庫版は、1999年の新国立劇場の上演にあわせて出版された。あとがきは作者の製作後記、といった形で、製作や上演の経緯が初演から書かれている。著者は戯曲以外にもエッセーなどの著作を多く残しておられるが、このあとがきも味わいが深い。1999年の上演について、「これが上演の第二期の始まりになるかならないか、は終わって見なければ分らない」と最後に書かれているが、ぜひまた舞台にあげてほしいものである。この作品の言葉の力・美しさはやはり「読む」だけではおしい。

 併録されている「龍が見える時」は民話である。朗読用の形で書かれた作品なので、読むとしてもどんな風に声に出したらよいか、を考えながら読みたい。