江戸は美味しい!
★★★★☆
寿司、天ぷら、蒲焼き、羊羹…、こういったいわゆる「和食」の粋は、ほとんど江戸後期に完成したものである。本書ではその江戸っ子の食生活が生き生きと描写される。庶民のエンゲル係数(生活費に占める食費の割合)が高かったのは当然であろうが、「米」が非常に高価な食品であったことは、江戸が米を輸入する大消費都市であったことをうかがわせる。ただし、江戸近郊で取れる野菜や魚は非常に安かった。
さて、本書は江戸っ子の食生活に関するトリビアの固まりなのだが、個人的にいちばん感動したのは「ぼた餅」と「おはぎ」の名前の由来を教えてもらったことだ。どうして同じ食べ物をこの二つの名前で呼ぶのかずっと不思議に思っていたので。その由来については、ぜひ本書を読んでほしいのだが、ヒントは「ぼた餅」=牡丹餅、「おはぎ」=「お萩」と元々は書いたというところ。
四季折々の江戸情緒が食べ物を通じて語られる。面白くてためになり、そして読んだあとお腹が空く一冊である。