ちょっとイメージが違いましたが楽しめました
★★★★☆
てっきり山内容堂のことのみを描いた作品だと思っていたので驚きましたが
読み始めるとすっかりこの作品に引き込まれました。
個人的には伊達の黒船が好きです。
といっても伊達宗城が主人公ではありません。
この時代の身分制度の厳しさを実感するような物語で新鮮でした。
この編の主人公は特に派手なことをする訳ではありませんが
学び、吸収して、物を作るという作業をただひたすらに
探究心のみで完遂してしまうという素晴らしい作品でしたので
何度も読み返したくなるような作品に出会えてよかったと思います。
気に入ったのは後半の2篇
★★★★★
いつもながら眼前に浮かび上がるかのような人物描写と豊富なエピソード、そして歴史の綾(例えば、ある意味「おうまれが良すぎる」(188頁)が故に、無邪気に寺田屋騒動や生麦事件を惹起した島津久光の姿)を感得させる見事な文体が素晴らしい。
なお、個人的に最も印象深かったのは、後半の2篇。「伊達の黒船」は伊達家宇和島藩の一裏借家人である嘉蔵(前原嘉市)の数奇な人生を描いて、いろいろな意味で「幕末」というものを見事に描き切った名編であると思う。また、「肥前の妖怪」は、「衰弱した政権が内乱をおこせばかならず政府そのものが倒れる。幕府は自ら滅びようとするのか」(321頁)と喝破した肥前佐賀藩の異能の一大名(鍋島閑叟)を描いて秀逸である。(おそらく、四賢侯のなかで司馬氏の最大のお気に入りは鍋島閑叟なのではなかろうか。読んでいて、筆の走りからはそのように感じられた。)
やはり司馬遼はいい。
幕末の4藩主
★★★★☆
4人の藩主を描いた4つの短編集ですが、
それぞれの藩主が関係する場面が描かれ、
同時代を違った角度から見ることができます。
賢候と呼ばれた4人で、
彼らがいなければどの藩も維新の主役には
なれなかったと思うのですが、
誰も維新後の主役にはなれなかった。
時代を牽引した彼らが
時代に追い越されるところが
また面白い。
登場人物が皆魅力的。でも予備知識が無くても十分に楽しめる。
★★★★★
出てくる四藩すべてにそれぞれ異なった魅力があり、おもしろい。佐賀藩とか宇和島藩はほとんど予備知識が無かったのに、十分に楽しめた。
自分の性格的には、佐賀の鍋島閑叟があっている。先を見越してこつこつ倹約。いつの間にか国力が上がり、他藩も一目おく存在に。でも最後は主役になれず、主役を引き立てる役に回る。僕もこんな感じ。
一方あこがれるのは、土佐の山内容堂。こけにされようが、自分と自分の信念を貫く。こういう姿は人の胸を打つもの。
幕末の賢候たち
★★★★☆
幕末の短編集で、以下の小説で構成されています。
◆「酔って候」(土佐藩 山内容堂)
◆「きつね馬」(薩摩藩 島津久光)
◆「伊達の黒船」(伊予宇和島藩 伊達宗城)
◆「肥前の妖怪」(肥前藩 鍋島閑臾)
「この時代、藩主たちも大変だったのね。」というのが正直な感想です。
越前候 松平春嶽が含まれていないことが、不思議に思いました。
色々な事情を抱えていても、やはり「藩」というものを守らなければならないのが、藩主の仕事。
たしかに、この賢候たちにはある意味で「アッパレ」です。
この時代の「藩主」を描いた小説として、すっごくおもしろかったです。
個人的な好みの順番でいえば、
1. 伊達宗城→2. 鍋島閑臾→3. 山内容堂→4. 島津久光
の順でしょうか。
実はこの本、かなり気に入ってます・・・・・