司馬遼太郎は読みやすい
★★★★☆
幕末の暗殺事件を扱った12の短編集である。
司馬遼太郎は読みやすい。おそらくジャーナリストの文体で小説を書くからだろう。
ジャーナリストの文体だから,本当のことだと思ってしまうが、司馬自身も言うように
「小説だから,自分が面白いと思う説をとっている」のである。
たとえば,同じ清河八郎でも,司馬遼太郎,藤沢周平,柴田錬三郎,比べて読むと
興味は尽きないが,一番冷静に引記で見ているのは司馬さんである。だから史実に近いかどうかは分からない。
坂本竜馬は大正時代まで生きていたのか?
★★★☆☆
坂本竜馬の名前を一躍有名にしたのは司馬遼太郎の『竜馬がゆく』である。
このなかで、<酒は土佐の佐川郷で吟醸される司牡丹である>という記述がある。土佐の銘酒「司牡丹」のことだが、この酒の名前は大正8年(1919)に伯爵田中光顕(田中顕助)が付けたものである。
小説の中の記述が正しければ、竜馬は大正時代まで生きて酒を飲んでいたということになる。司馬遼太郎のフィクションとして「司牡丹」が出ているのだが、土佐を印象付けるために現在も愛飲できる酒の名前を流用したのだろう。
佐川郷出身の勤皇の志士であり、坂本竜馬、中岡慎太郎が暗殺された後、中岡慎太郎が率いる陸援隊の代理だった。中岡の死後に隊長格となり、明治の元勲の一人として宮内大臣などの要職を歴任し、極めて長寿であったという。
地縁と偶然に助けられた田中光顕は「運」の人という印象を受ける。
暗殺する者、される者、逃げる者
★★★★☆
幕末に起きた暗殺事件を描いた短編集。暗殺する者、される者、逃げる者などなど主人公はさまざま。こうした人物の生活や精神状態が細かく描かれており、暗殺する過程、される過程、暗殺から逃げる過程が手に取るように分かる。また、桜田門外の変から維新前夜までをカバーしているので、「天下のために死なねばらないない」という精神で暗殺を決行した幕末初期の暗殺者から、功名や金のために活動するその後の亜流暗殺者まで、垣間見ることができる。著者のあとがきが短いながらもなかなかに味がある。「書き終わって、暗殺者という者が歴史に寄与したかどうかを考えてみた。ない。ただ、(以下省略)」情報が限られていてまったく先行きの見えない政治情勢の中で、暗殺はトップダウンに実行されるだけでなく、その「暗いエネルギー」がどう自ら沸き上がるのかが見えるのもこの本の興味深いところ。
暗殺する者、される者、逃げる者
★★★★☆
幕末に起きた暗殺事件を描いた短編集。暗殺する者、される者、逃げる者などなど主人公はさまざま。こうした人物の生活や精神状態が細かく描かれており、暗殺する過程、される過程、暗殺から逃げる過程が手に取るように分かる。また、桜田門外の変から維新前夜までをカバーしているので、「天下のために死なねばらないない」という精神で暗殺を決行した幕末初期の暗殺者から、功名や金のために活動するその後の亜流暗殺者まで、垣間見ることができる。著者のあとがきが短いながらもなかなかに味がある。「書き終わって、暗殺者という者が歴史に寄与したかどうかを考えてみた。ない。ただ、(以下省略)」情報が限られていてまったく先行きの見えない政治情勢の中で、暗殺はトップダウンに実行されるだけでなく、その「暗いエネルギー」がどう自ら沸き上がるのかが見えるのもこの本の興味深いところ。
あとがきの「暗殺だけは、きらいだ。」が、この本の位置づけを語っているかも知れない。
★☆☆☆☆
おそらく、月刊雑誌に一年間連載した「暗殺」をテーマにした企画モノだったのだろうけど、後になればなるほど明らかにテンションも下がり、つまらなくなっていく。
一番最初の「桜田門外の変」は、著者自身例外的に「歴史を躍進させた」意義のある暗殺事件だと評している事もあり、無名の暗殺者に陽の目を浴びさせようと言う意欲が見える。しかしそれ以降は、描かれる人物に魅力が無く、「暗殺されても仕方がない」「暗殺する奴はろくな人間じゃない」と言える人選。それらの人物を中心に据えて魅力的な作品を描けたら、奇跡かもしれない。
あとがきの「暗殺だけは、きらいだ。」が、この本の位置づけを語っているかも知れない。