インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

電撃戦という幻〈上〉

価格: ¥3,990
カテゴリ: 単行本
ブランド: 中央公論新社
Amazon.co.jpで確認
電撃戦の実像 ★★★★★
 グデーリアンの回顧録は本来「1軍人の回想」となるべきところだが、「電撃戦」というタイトルで出版されている。また彼の著書からも「電撃戦」という言葉は出てこない。WW2勃発時ドイツと英仏これにオランダ、ベルギーを加えた戦力を比較すると圧倒的にドイツが不利である。ポーランド侵攻により英仏の宣戦布告を招いたことはヒトラーの大誤算だった。ドイツで使い物になるのは6コの装甲師団と10個程度の自動車か師団と限られた歩兵師団のみである。フランスはマジノ線と強力な戦略予備兵力によるドイツを数回にもわたり壊滅できる戦力を有していた。にもかかわらずその機会をフランスは逸した。フランスの失敗はなにか。それはマジノ線を生み出した硬直した軍事思想をよくあげられるが決してそれだけではないだろう。もしフランスが守勢出会ってもライン川超えで侵入する部隊はマジノ線で撃破、ベネルクス方向から来る敵に対しては戦略予備隊で撃破し、じ後ドイツを壊滅するというのは合理的な戦略である。フランス壊滅の原因は戦略的にはアルデンヌから来るドイツ軍を軽視し、ベルギー経由で侵攻するドイツ軍部隊を主攻勢と判断したミス、ドイツ軍の陽動を見破れずマジノ線沿い及び中南部フランス軍の拘束などがあげられるが、30年代からのフランスの政情が左翼政権の登場を招くなどの不安定さ、WW1の大量戦死から来る戦後特有の戦争回避思想と空想的観念的平和主義、ドイツと比較した自軍戦力の過信等が挙げられるだろう。それでもドイツ軍の暴挙とも思える作戦が成功したことには奇跡的なものを感じる。(上巻のみの感想)
ドイツ国軍の指揮官たちの先端的な作戦運用が、戦略構想の幻想を生むまで ★★★★★
戦史を丹念に掘り起こしながら、「電撃戦」の通念や神話を、ひとつひとつ丁寧に解体していくその過程は読み応えがある。「電撃戦」が「軍事の天才」ヒトラーによって発案され検討準備された国家戦略ではなく、ドイツ国軍のいわば現場たたき上げの将軍たちが提唱していた局地的、短期的な戦術レベルのものであること。あるいは、ドイツ軍の機甲兵力がフランス軍のそれを、量的にも質的にも圧倒していたというのはナチスの事後的なプロパガンダに過ぎず、実態は全く逆だったこと。組織的、体系的な作戦計画が準備されていた訳でもなく、現場指揮官の直感と機敏な判断によって集中突破と連続的な運動が実行され、しばしば偶然やフランス軍のパニックなどの僥倖に恵まれての成功だったこと。戦車や自動車化部隊が想定を上回る移動速度を発揮したわけではなく、懸念されていた交通渋滞や通信連携の齟齬をあちこちで起こしたこと。などなどである。ただ、本書でも覆らなかったのは、フランス軍のアルデンヌの森を戦車は突破できないという思いこみと、保守的で時代錯誤的な歩兵中心の運用思想があっけないほどのもろい敗戦を招いた、という認識だろう。
刺激的 ★★★★★
この上巻における主張は、第2章のタイトルに端的に表現されていると思う。

すなわち、『「“電撃戦”構想」無き“電撃戦”』こそが、唯一の成功した「電撃戦」といわれる1940年のフランス戦役の本質であったという主張である。

「“電撃戦”構想」が存在していなかったことに、本書上巻は、丹念な分析を繰り広げていく。それは特に、軍事的な教条として“電撃戦”が確立していなかったことに表われている。ポーランド戦を経てもなお、“電撃戦”はグデーリアン以下の機械化推進派の将軍たちの思念にしか存在しなかったというべきか。

さらに、対仏戦の準備が、長期的にも短期的にもほとんどなされていなかったことから、結論として対仏戦にほとんどの人間が勝てる要素を見出していなかったことが論証されていく。

対仏戦が本格的に始動するまでの過程で、面白い役回りを演じてるのが参謀総長ハルダーである。ドイツ国家の滅亡をもたらす者と考えたヒトラーの暗殺まで決意しながら、それができず、対仏戦に勝利する方法も見つからないままに、一旦は排除したマンシュタインの鎌計画を採用し、あまつさえ積極的な立場で計画を統御せざるを得なかったという彼の役割は、非常に興味深い。そして、ハルダーに代表されるドイツ軍側の多くの関係者が、戦争の勝利というよりも、言わば「前方への脱出」を図っていたというのだ。

だが、グデーリアンら装甲部隊の各指揮官の進取性が、「“電撃戦”構想」無き“電撃戦”に実体を与え、フランスの指揮系統の不備も手伝って、成功裏に“電撃戦”を進めていく…。

この皮肉とも言えるプロセスを巧みに、そして、事実に立脚して描こうとしている本書上巻は、非常に刺激に満ちた内容に仕上がっている。
電激戦は存在しなかった! ★★★★★
第2次大戦の緒戦のナチス・ドイツの連勝の代名詞ともなった「電激戦」。それは、ヒトラーの天才に帰されることも多い。しかし、それはナチスのプロパガンダが作り出したもので、実際にはそんなものは存在しなかったというのがこの本の一番の主旨である。

ポーランド戦が真の電激戦ではないという主張の本はこれまでもあったが、フランス戦もそうでなかったとするのは、ユニークな主張に思えるが、読めば、まさしくその通りでしかないと納得するだろう。

勝利をもたらしたのは、ヒトラーの天才的戦略でなく、マンシュタインとグデーリアンという優れた二人の将軍とドイツ軍のがんばりだけだったというのが、詳細なカラー地図を多数用いながら語られる。