誰もが知っている本ばかり
★★★★★
財界随一の読書家として知られていた故平山氏と経済小説作家の故城山氏の対談形式。
人生でもう一度読み返したいような本(小説)を紹介している。
ここで取りあげられている作品は、有名なものばかり。
例えば、太宰治(人間失格)や中島敦(山月記)などは読書嫌いでも学校で教材として読んだに違いない。
改めてこうした(有名)作品の価値を語っている。
対談内容が自分も過去に読んでいる作品の話題なので、共感する部分もあるし、初めて知るような解釈もあって愉しく、いくつかの作品は再読しようと思った。
ガンコジジイ二人が若き日の読書を語る
★★★☆☆
本書の「もう一度読み返したくなる良書」というねらいは良いと思うのですが、対談しているのは城山三郎氏と平岩外四氏。いささかガンコジジイの趣きのあるお二人です。
平岩氏は経団連会長として国政に口をはさんでいましたし、かたや城山氏は2003年に、「個人情報保護法案は言論の自由を圧迫するものだ」と怒っていました。「この法案が成立したら『言論の自由の死碑』を建て、賛成した全議員の名を刻む」と叫んでいた姿を思い出します。
その二人が若き日に読んだ本を毎月一冊ずつ再読し、名作の魅力を対談形式で語り合いました。比較的有名な本を選んでいるようで、半分は私も読んだことのある作品でした。中にはジョイスの「ダブリン市民」、アンダソン「ワインズバーグ・オハイオ」など聞いたこともない作家・作品もありましたが、丁寧なあらすじが載っているので、二人の話に参加することができます。12冊全部が二人に共通の思い出の書というわけではなく、城山三郎の推薦で平岩外四が読んだことのない本を取りあげたりして、当初の企画意図から離れた本もありました。
どうも、大御所の二人が意気投合する、というのが本書の隠れた目的だったようですね。
参考までに、取りあげた12冊の書名と作者を挙げておきます。
「こころ」夏目漱石
「老人と海」ヘミングウェイ
「人間失格」太宰治
「変身」カフカ
「山月記・李陵」中島敦
「車輪の下」ヘッセ
「野火」大岡昇平
「ダブリン市民」ジョイス
「ダロウェイ夫人」ウルフ
「かもめのジョナサン」
「間宮林蔵」吉村昭
「ワインズバーグ・オハイオ」アンダソン
ちょっと残念だったのは、12冊全部が小説だったこと。それに、若き日に読んだ本の再読なのに、ロマンスが一冊もない、ということ。
だからガンコジジイなんですよ!
そういう時代に青春を過ごしたのですから、しかたないのでしょうかねー。
内容の濃い読書ガイド
★★★★★
経済小説で有名な城山三郎と財界のリーダーで読書通の平岩外四の対談形式による読書ガイド。全部で12の作品を取り上げており、国内作品は5点、海外作品は7点となっている。どの作品についても、対談者の作品に対する素養が背景にあるので、たいへん興味深い内容になっており、すぐにでも原著を読みたい気持ちにさせる。特筆したいのは各章の前後に、作品のあらすじと解説が掲載されているが、これが簡にして要を得たもの。伊藤さんという方が書いているが、とてもすばらしいアンソロジーである。