9・11以降のアメリカとその精神史
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アメリカで生活していると、アメリカ人はかくも信仰心に篤いのか,と思う。それは民族を超えている。宗教が葬式宗教に堕してしまった日本とは基本的に違う。宗派に関わらず日曜日には教会に行くし、日曜日のミサに出れない人のために土曜日にミサを行う教会すらある。この宗教心の篤さを維持しているのは、明らかにWASPの精神であり、この規範性がアメリカ社会の良心的な部分を維持する原動力になっていることを他の民族出身者でも認めざるをえない。こうした多民族社会を支える多様性の社会でありながら、リベラルに社会を維持しようとするアメリカにおけるキリスト教の特異性を分析して余りある。
歴史的言説でコンテキストを維持しながら、世論調査結果や様々な統計データを駆使した分析は説得力をもつ。
大統領選挙を意識した戦略的な出版だが、議論の普遍性は今秋の選挙だけを狙ったわけではあるまい。
アメリカで暮らしたことのない読者に薦めたい。