すばらしい作品、しかし....
★★★★☆
この作品のすばらしさについては先のれびゅあーの皆さんに語り尽くされています。ただ、日本人としての立場からすると、一つ留保があります。この作品を楽しむには第2次世界大戦初期の欧州情勢、とりわけ英独における講和の試みについての詳しい知識が必要で、さもないと真実と虚構の境目をさまようのも、なにが真実で何が虚構かわからなくなってしまいます。
おもしろい。 けど、 くどい。
★★★☆☆
アンドルー(弟)「兄ちゃん、また双子の本だよ」
アンドルー(兄)「え?俺ら以外の双子の本、書いたのか?」
アンドルー(弟)「そう、一回読んでも、タネわかりにくいし、ロンドン空襲とかイギリス歴史の基礎知識知ってないとピンとこないとこあるしね」
アンドルー(兄)「俺らみたいな江戸っ子にとってはわかりにくいよな。で、あいかわらずくどい文章なのかい?」
アンドルー(弟)「うん、途中だれるんだよねぇ。何かもっとすごいどんでん返しかと思ったら、最後はこんなオチかい!と突っ込みいれたくなるし・・」
アンドルー(兄)「それいったら、奇術師も魔法もそうじゃないかい。そこがプリースト先生の持ち味ってもんだろ。ところでおまえはマナとカナどっちがいい?」
アンドルー(弟)「えっ・・・・」
バターをたっぷりつかった野菜料理・・・
ご馳走さまでした。
ぐんにゃりと
★★★★☆
魔法で味わった作品の世界がグニャリと歪む感覚は健在であった。
奇術師で?となったのだが本書ではその歪んだ白昼夢的な世界を見事に再現している。
第二次世界大戦史のこうなるべきであったかもしれないというIFまでもがその歪んだ世界を形成する核として使われている。勿論歴史を知らぬ者でも十分楽しめる。
第二次世界大戦下の登場人物の歴史を読み進むにつれ、いつの間にか違和感とともに作品の内に引きずり込まれていく奇妙な感覚がある。それも何度も前のページと読み直しながら。
魔法に次ぐ傑作ではないだろうか。
力作ということは認めるが、読者に何を与えてくれるのか?
★★★☆☆
噂に高いプリーストの「双生児」を読んだ。確かに通りいっぺんの双生児モノではなかった。第2次大戦のヨーロッパ戦線を舞台に、英国人の双生児(二人漕ぎボートのオリンピック銅メダリスト!)の行く末にパラレルワールドのアイデアを絡ませて、何度も前のほうを読み返す必要があるほどの執拗な書き込みであった。しかしして読後の感想は・・・ウーン。巧みに構成された力作と言うことは認めるが、少なくとも読後のカタルシスといったものは感じなかったなー。
知的水準の高い、SFミステリー・エンターテインメント
★★★★☆
’07年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第4位、「このミステリーがすごい!」海外編第15位にランクインした、英国SF協会賞、アーサー・C・クラーク賞受賞作。
ストーリーは歴史作家グラットンが、サイン会で初対面の女性から、手記を渡されるところからはじまる。それは彼が次回作のために調査していて、チャーチルが回顧録の中で指摘したある矛盾を解決するはずのものであり、雑誌で情報の提供を呼びかけていたものだった。それが冒頭の第1部。
ここから第2部と、第3、4部を挟んで第5部のふたつの部で一卵性双生児のふたりによるパラレルワール・歴史改変ストーリーが展開されるのである。
ベルリンオリンピック、第二次世界大戦、チャーチルの思惑、ルドルフ・ヘスの独英単独講和の画策など知的好奇心をくすぐるテーマながら、正直、歴史が分岐してゆく過程を読み解くのはなかなか難しかった。読み終わった今でも物語の正誤性がつかずにいる。
プリーストは、SF、ミステリーにおける技巧を縦横無尽に駆使して、同じイニシャルを持ち、歴史の流れに翻弄される一卵性双生児、ジャックとジョーの人生を、虚実入り乱れた「語り=騙り」で描ききっているのだ。
本書は、知的水準の非常に高いSFミステリー・エンターテイメントであるといえよう。