「私の人生観」では、美は夢想ではなく、見神にも通じる生きた工夫の中から生まれるものだという。その思索は晩年のベルクソンと柳田國男をとりあげた「信ずることと知ること」にまでつながっている。「知ること」の後に「と」が付いていないことに注目しよう。小林は「信」と「知」は一つだと言っているのだ。値段も内容のわりに驚くほど廉価であり、現代を生きる日本人として自信を取り戻すためにも、こういう書物がもっと読まれるべきだと思う。