地球上の生物の中で、快楽のために性行為を行うのは人間だけだと言われている。全編の80パーセント以上がセックス・シーンで埋めつくされたデビッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』は、通常とは違う性行為の方法でエクスタシーを感じる、世間的にはアブノーマルだとかフェチと呼ばれる人たちが続々と登場し、その倒錯ぶりを見せる映画だ。とりわけクローネンバーグが強調してみせたのが、自動車事故を媒介にして得られるエクスタシーである。衝突実験の映像をビデオでグループ鑑賞し、互いの股間をまさぐりあうシーン。クローネンバーグの視点は、そうした男女の妄想と欲望に満ちた姿を見せるだけで、それについていかなる言及もしない、言及するキャラクターを配置しないという、いわば傍観者の立場を貫いているのだ。彼にとってはこういう映画を撮る行為こそが、フェティシズムを満足させることなのだろうか。原作はJ・G・バラード。(斉藤守彦)
洗車機はエロス
★★★★★
映画に混ぜられた「特定の人だけに向けられたメッセージ」。
車のクラッシュシーンにエロスを感じる層に向けたサービスシーンは、その一つだと思っていたが、そのものズバリの映画。
しかしこの《ヘア解禁ニューマスター版》という文句はいかにもいただけない。この映画を《身体障害者のセックス》と言ってしまうのと同じぐらい無粋。 他の人のレビューを見ると「変態」「変態」「ど変態」という文字がならび、そうか、変態か…とひとりごちる。
意味不明映画かと思いきや、高速道路と洗車機と廃車にまつわるエロス、他にも妙な「わかってるな」的フィット感。そう、洗車機はエロいのだ。ボロボロの62年式リンカーンが以前乗ってたデボネアに似ていて他人事に思えなかったり、いろんなことが理解できてしまう所が、薬物影響下における変性意識状態とよく似ていた。
そして、こんなニッチな作品が1971年から再度の映画化というのに驚く。 見終わった夜、えげつない悪夢として続編を見ましたとさ。面白かったけど。
連続するショック(衝撃)。
★★★★★
思わず目を覆いたくなるような連続する衝撃。冷静になれるのは2回目から!
気持ちが理解できました
★★★★☆
劇場公開のときはクローネンバーグも変わった題材に取り組んだなぐらいの気持ちでしたが、あれから死んでもおかしくない事故に遭って初めてこの作品が理解できた。事故の瞬間って、快感なんです。共感してくれる人は絶対にいるはず。その経験をしていないと楽しめないかも。
寂寥感
★★★★☆
交通事故の興奮でしか性的エクスタシーを得られないという、変態ファクトリーのお話。
夫婦愛の形としてはナンでもアリだろうが、性の渇望というより生の悲哀である。
(見ているうちに疲労してくるので、ふんだんなセックスシーンとヘアはどうでもいい。)
それなのに映像は綺麗なもんだから、面喰らってしまう。
巻き込まれ型万年好青年顔のジェームズスペイダーが主役だからこそ、よかった。
一方、妻役のデボラカーラアンガーは野性的な美貌がいい。
女医役のホリーハンターは、白衣を想起させるコート姿がセクシーだし、
バンビ顔のロザンナアークエッドに、器具を全身装着させたのもよかった。
(どんな経緯であのような不具になったのか、考えたくもない。)
ジェームズディーンの死亡事故シーンの再現、主人公の役名もジェームズなので、
あらぬ想像をかきたてられる。
いやぁな気分のまま、ラストになだれ込む。
でもジェームズはCFプロデューサー。あるいは彼の、一条の夢だったのか…と思う。
変態さん大集合
★★★★☆
以前出ていたプラケース仕様のソフトに較べると確かに抜群に画が綺麗になってます。この映画で基盤になっているブルーの色が実に鮮やかで画は本当に綺麗。それがまたこの変態さんしか出てこない、ある意味無茶苦茶なラブストーリーを際立たせています。ただし初スクイーズヴィスタ化ですが、撮影はスタンダードだったようで、プラケースバージョンの上下にマスキングをしている(まぁこれが正しい劇場公開版なのでしょうけど)ものですから、クローネンバーグファンはどちらも揃えなければならないのでしょうか?でもこの映画、クローネンバーグにしてはあまり面白くはないですよね。最初に劇場で見た時には、出てくる人出てくる人全てが変態さんの道まっしぐらという展開が衝撃で強烈に印象に残ったのですが、こうしてしみじみDVDで見てみるとちょっと所々退屈かなぁ。ただこれが正しくこの映画のテーマなのですが、事故シーンとかが本当に溜息つくほど綺麗に撮ってあってこれがある意味本当に変態ちっくです。そこがクローネンバーグぽいというかなんというか。