社会科教師必読の本、道徳の授業でも実践可能
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足立区のとある中学校で社会科公民の授業で行われた「よのなか科」の実践が細かく報告されている。ページ数が多いのは生徒のディベートの発言を多く掲載しているからであり、的外れな発言で脱線しないように論点を修正する声がけや生徒の鋭い指摘の取り上げ方など、実際に社会科の先生が実践する際に役立てられるように構成されている。論題も生徒の意欲を喚起するようなテーマが設定されていて、マクドナルドを通した貿易学習やゴムの付加価値、子供部屋にまつわる責任と自由の関係、市長シュミレーションで税金を考える。自分のクローン人間作りの賛否など、生徒の意見が分かれるようなテーマがずらりと並ぶ。無気力で自分の意見をはっきりと主張することを面倒くさがる中学校の現状を考えればかなり有効な実践であり、生徒の授業後の感想も参考になる内容になっている。だたし、この本をそのまますべて実践するには、勇気が必要だと思う。たとえば自分を殺す自殺を認めるか認めないかといったテーマは、管理職や保護者に対して事前にねらいや主旨を説明したとしても、実践できない中学校もあるような気がする。中学生に対する援助交際を肯定できるかどうかといった質問も同様で、生徒の本音や実生活に正面から向き合う姿勢と勇気には頭が下がるが、配慮が求められると思う。