伝説の「ベイシー」での、一夜限りの素敵な“夢”の瞬間を追体験させてくれる。
★★★★★
いわゆるジャズ・ジァイアンツと呼ばれる人たちの訃報に接する時、それが世の摂理とは言え、やはり一抹の寂寥感を感じてしまうのだが、ジャズ・ピアニストの中には、老いてなお現役で活躍するミュージシャンも多々見られるのは、嬉しい限り。今作のハンク・ジョーンズも、御年88歳!で、今だ現役。識者から生真面目で没個性、面白みに欠けるとの評価を受けてきたミュージシャンだが、今ライブでも、恐らく過去何百回と弾いたであろう名曲たちを、鍵盤の上で、綽綽と端正に奏でるその演奏ぶりは、やはり誠実さと自信を感じさせる。我らがKeiko Leeも、物怖じせず、相変わらずの自然体で、見事な歌いっぷりだ。G・ガーシュインの名曲である3.での艶めかしい吐息を吐きかけられた様なしっとりした情感に酔わされたかと思うと、5や9と言った極めつけのスインギングな楽曲での、店内一体化した至福のムード(5では、彼女の豪快なGAHAHA笑いも洩れ聴こえる〜笑)が楽しい。決して、歴史に残る名盤と言う訳ではないが、伝説の「ベイシー」での、一夜限りの素敵な“夢”の瞬間を追体験させてくれる幸福な1枚。何しろ、Keiko Leeは、名古屋の「ラブリー」を拠点にしていた頃、何度か話をさせてもらったし、彼女からプリクラを貰った事があるので、どうしても★の数も上がるのだ。ゴメン(笑)。