これまでとはちょっと違ったハワイへのまなざしに気づく
★★★★☆
人文社会科学分野の様々な領域にまたがるハワイ研究の論文集。
ハワイ先住民の神話から、近年におけるハワイでの障がい児教育まで、幅広い範囲をカバーしています。
特に、日本国内の学会論文発表数を反映してか、本書の掲載論文にも大枠での「日系人研究」に属するものが多く見られます。
ただ、単なるアメリカの一地方都市としてのホノルル・アメリカの一州としてのハワイを取り上げたものがほとんどみられないのは、ハワイという土地の特殊性なのか、それとも編著者側の意図的な編集によるものなのかはわかりませんが、若干残念な点ではありました。
特に経済的側面をとりあげた研究、あるいは社会的側面においても計量的手法を用いた研究に関する記述は薄くなっています。
これらの分野においては、ハワイをフィールドとした研究を行う余地がかなり残されている可能性が残ります(もちろん、単にその分野の研究者が本書の作成に参加していなかっただけという可能性もありますが)。
とはいえ、付表で掲載されているハワイ関連の文献リストやハワイ関連年表も、ハワイに関心をお持ちの方には一見の価値があるかと思います。
「観光地」としてハワイを気に入られた方にも、これまでとはちょっと違ったハワイへのまなざしに気づくきっかけになるかもしれません。
是非お勧めしたい一冊です。
ハワイを知りたい人に
★★★★★
本書は論文集であるため研究対象が様々でした。そのため興味のある章もあれば、ないものもあるかもしれません。私自身も必要だった論文は半分くらいだったと思います。
しかし一章が短いので読みやすく、本当に様々な視点からの論文がたくさんあるため観光地ハワイの違う一面を知りたいと思う人にはお勧めかもしれません。社会学の面白さがわかる一冊だと思います。参考文献も比較的たくさんのっているので興味を持った分野を読み進めるのには便利です。
私としては、日系人の研究が博物館や日本映画、レストランといった視点からなされているのがとても斬新で面白いと思いました。新しい研究の視点、枠組みを考えるのにも役立ちました。
ぜひぜひ本書を読んで今まで見えなかったハワイと向き合ってみてください。
こんな本を待っていた
★★★★★
神話、フラ、ハワイ語から始まり、社会学的アプローチを踏まえたハワイの現在まで、各分野の代表的なハワイ研究のアカデミックな広がりが概観できる。ある一つの分野を突っ込んで知りたい人には向かないとは思うし、基本は研究論文なので内容は硬いが、各論文が短く、内容が凝縮されているため、素人にはかえって読みやすい。また、巻末の推薦文献、ウェブサイト一覧など、情報収集に役立つ。見方によってはいろいろ批判がありうる本かもしれないけれど、個人的に非常に必要な本だったので星五つ。