現代カトリックを学ぶ人のために
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何はともあれ第二バチカン公会議に関する一次文献である。
巷間には第二バチカン公会議についての、まったく根拠のない、個人的感想に過ぎないおしゃべりが散乱している。驚くのはそれらの多くが、実際に第二バチカン公会議公文書を読んだとは思えないところである。みな二次、三次文献の聞きかじり読みかじりだ。
第二バチカン公会議によって「カトリックは変わった」と、誰もが一様に言う。しかし、何がどのように変わったのかを正確に知るためには、一次文献であるこの「公文書」をまじめに読むしかない。たとえば一次文献が研究者などでなければなかなか入手できないというのなら話は分かるが、このように邦訳で、しかも比較的安価で購入できるのであるから、公文書それ自体に目を通さずに第二バチカン公会議について語るのは、はっきり知的怠惰だと断言できる。
もちろんこの公文書全集は、単にそのような資料的価値のみがあるのではない。これを読むことで、「現代カトリック」についての、全体的かつ正確な知識を習得することができる。例えば「教会憲章」は現代カトリックの教義についての適確な総覧になっているし、「啓示憲章」は聖書に対しての、「エキュメニズムに関する教令」は他教会に対しての、「現代世界憲章」は世界に対しての、こんにちのカトリック教会のスタンスを教えてくれる。あの浩瀚な『カトリック教会のカテキズム』を読み通す自信のない人でも、さしあたり上記の文書を読むことで、現代カトリックについて幾ばくかを学ぶことができよう。
現在とこれからの(!)カトリックだけでないキリスト教を考える基本文献。ただし、一般向けではない
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私のような、素人で、かつクリスチャンでもない人間がこのような書を買った(まだ、完読には至っていない)きっかけは、ヴァチカンないしローマ法王に関する一般向けの近著で、「21世紀を迎え、第三バチカン公会議の召集が待たれるところである」という記述に驚いて、検索した結果、本書の存在を知ったことにある。
ま、もうどうにも止まらない新刊本の大量生産で、一般向けの書物のレヴェルは凄まじく低下しているからこうした例は無数に経験しているけど、やはり「あまりにひどい!」と思った。
多少なりとも事情をご存知の方には、明らかに課題を積み残したまま終わった「第1」とは違い、「第2バチカン公会議」が極めて多数の、それもローマ・カトリック教会の歴史でも大きな意味のある公会議であったのは常識に属しよう。そして、40年を経たいまでもその「意義」についてのさまざま議論とそれに沿った実践的努力が続く(こうした事情は日本語文献では殆ど分らないけど)状態であって、その「評価」を論じる段階にすらまだ至っていないというのがド素人の愚生の思うところである。
ネットの発達で、こうした文書はヴァチカンの公式サイトからたどれば、愚生の貧しき語学力でもなんとか入手は可能だろう。が、辞書と同じで邦語で1冊に纏められた本書をぱらぱら眺めているだけで実に良い勉強になる。無論、神学的議論を十分に理解する能力の無い私にはその意味するところの極々わずかしか理解できないのは明白。でも、それを多少は補ってくれる文献は多数存在する。
一切の解説的補足の無いものだけど、こうした一次資料が常に入手可能で、かつ安価であることはとてもすばらしいことである。但し、翻訳者名も日本語版の意味についても全く記されていない点だけはややひっかかる。