それ以前のポリスにはなかった、暗く陰鬱(いんうつ)で一貫したテーマをもつ本作は、ほぼすべてのナンバーで、現代政治とテクノロジー文化のマイナス面を取り上げている。唯一の例外は「Every Little Thing She Does Is Magic」で、この完璧なポップ・ソングはラジオでヒットした。その他のナンバーはさまざまな問題を扱っている。抑圧に抵抗しようとする潜在的な願望、ほとんど工業化されていない世界の放棄、毎日爆撃のように脳に浴びせられる過剰なまでの言葉とイメージ、個人的な意見や政治的な主張を通すためにしばしば振るわれる暴力。それらが、ポリスにとっていつになく濃密な、何層にも音を重ねたアレンジで表現されている。アンディ・サマーズのギターラインはこれまで以上に優美で、スティングのベースはキーボードやサックスで味付けしたサウンドとミックスしながら軽くつま弾かれ、それをスチュワート・コープランドの正確無比で個性的なドラミングが押し進める。ポリスに最高の成功をもたらしたのは、アルバムとビデオがともに大ヒットした『Synchronicity』だが、ポリスの最高傑作と言えば本作である。(Albert Massa, Amazon.com)
ポリスの音造り、ここに極まれり
★★★★★
81年発表の4枚目である。
それまでのキャリアを踏み台に、新たな側面に切り込んだ意欲作だが、
次のステージに差し掛かった次作『Synchronicity』がラストになったために、
ある意味The Policeの集大成、という位置づけも可能かと思う。
内なる感情を吐露していた従来のスタンスから、
社会への批判・危機意識という外向きの表現に変わった、
というのはよく語られる通りであるが、
音楽的に見ると、キャッチーな曲は圧倒的に減少している。
むしろ大ヒットした「Every Little Thing She Does is Magic」の方が例外であり、
充分なアクセントとなっている。
はじめてキーボードやホーンが大胆にフィーチャーされたサウンドは、
全体的に理知的でスタイリッシュであるが、同時に無機的な趣も併せ持ち、
リスナーと音源との間に微妙な距離感を与える冷たさを持っている。
ロックやパンクやレゲエなどといった前3作の命題も、
その無機的でクールな音像に取り込まれ(飲み込まれ)、同居している。
なんとなく、テクノロジーと人間性の同居というテーマすら想起させる。
いずれにせよ、このアルバムは、
初期作風と、空前の成功を収めた次作をリンクさせる重要な作品であり、
音像においてはThe Policeの到達点と言えると思う。
知名度は低くとも、本作こそ彼らが残した5作中もっとも輝かしいのだ。
シンセサイザー
★★★★★
まさに80年代初等のデジタルっぽさがとても印象に残る作品です。プロデュースはあのジェネシス、インビジブルタッチを手掛けたヒューパジャムらしい私の中では、最高の思い出の一枚です!又ジャケットデザインのメンバー3人のデジタルな顔もカッコいいです!あのA&Mロゴもイィな〜
次作の影になりがちですが
★★★★☆
次作にはポリスの最終章となる"シンクロニシティ"が控える訳ですが、その一歩手前である本作('81年作)では作品全体が持つインパクトこそ"シンクロニシティ"に及ばないかもしれませんが、何かしら哲学的と言いますか、精神的な領域へのアプローチと言った点で、"シンクロニシティ"へに布石になっているような気もします。
#"機械の中の幽霊"とは哲学者ギルバート・ライルの著書の中から採られた言葉
#なのでしょうか?
珍しくホーンが挿入されていたりして、必ずしもこれまでのシャープ感をエクステンドしている訳ではないのかも知れませんが、ポピュラリティの点についても[2]のヒットに代表されるように、決して小難しさばかりの世界に突入しているのではなさそうです。
スティングのライティング能力の高さは勿論のことですが、個人的にいつも惚れてしまうのはスチュワート・コープランド(ds)のスティック捌き。素晴らしいです。
ようやく晴れた不満
★★★★☆
私がポリスを何らかのテーマ性を持って聴き始めたのは「シンクロニシティー」のリリース翌年であったため、すでに発売済みの5作のアルバムを自分の好みの順番で、といった感じの聴き方であった。
そのため、彼らの音創りの変遷を特に時系列では意識せずに聞いていたわけだが、この「ゴースト・イン・ザ・マシーン」に対してはつい最近まで違和感を覚えていた。
オリジナルのアナログ盤では、とにかくスティングのヴォーカルが不鮮明で弱々しかったのだ。「マジック」や「ハングリー・フォー・ユー」以外は、まるでトンネルのはるか向こうから聞こえているようで、他の4枚アルバムと決定的な壁を作っているように思えていてならなかったのだ。
本当は名曲揃いのアルバムなのだが、こんなサウンドはポリスではないとさえ思い、当時はレコーディング・エンジニアのヒュー・パジャム(大御所!)さえも憎らしく思えた。
が、しかし、この2003年リマスターのSHMCD盤を聴きその不満がようやく晴れた。スティングもヴォーカルに力が蘇ったのだ。もう他の4枚と並べて聴いても違和感がない。おまけに紙ジャケット仕様で、CDのレーベル面には当時のLPレコードのレーベルがプリントされているのだ。もう何も言うことはない。私の四半世紀近くに亘る不満がようやく晴れたのだから。
ポリスのもうひとつの世界
★★★★★
ポリスの第4作目ですが、ポリスサウンドが完成した『ZENYATTA MONDATTA』の次で、歴史的傑作『SYNCHRONICITY』の前の、と俯瞰でみられ、語られてしまうアルバムです。ただ冒険や行き詰まり等ではなく、明確なビジョンの元、シンセを大幅に導入し、アレンジ面においてはかなり刺激的で、次作への橋渡し的とも言えるアルバムなのです。そう、ビートルズにおける『リボルバー』とも言えます。また、他のアルバムにはない、重みと渋さを持ち、最もメッセージ性の強い作品となっています。中でもM2、M8が好みですが、やはりM1の「マテリアル・ワールド」ですかね。とにかく聴けば聴くほど味が出るアルバムなのです。