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闇の掟―公事宿事件書留帳〈1〉 (幻冬舎文庫)

価格: ¥600
カテゴリ: 文庫
ブランド: 幻冬舎
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設定が面白い連作時代小説の第一作 ★★★★☆
江戸時代を舞台に主人公が事件に遭遇しながら成長していく姿を描く作品としては、藤沢周平の獄医立花登シリーズや池波正太郎の剣客商売を愛読してきたが、澤田氏のこのシリーズもその系譜に連なると言えるだろう。

設定はかなりユニークだ。主人公は家を出奔して浪人となった歳が30手前の田村菊太郎で、京都の公事宿に居候して何か揉め事が起きた場合には手助けしている。公事宿は江戸時代の民事の訴訟人が泊まる旅籠で、かつ訴訟を助ける司法書士や弁護士のような役割も担っていた場所だ。一方で、菊太郎の出奔した家は京都東町奉行所同心組頭で、弟の銕蔵は父親の後を継いで組頭を務めているため弟の相談に乗ることもある。従って菊太郎は公事宿絡みの民事事件と奉行所絡みの刑事事件の両方に関わる機会を持っているのだ。

本書には7つの作品が収められておりどれも面白く読めた。菊太郎の今後がどうなっていくのか楽しみなシリーズ第一作だ。
これからゆっくりとハマります ★★★★★
テレビドラマを見て一度読みかけたのですが、京ことばを読む作業に頭がついていかず、落伍。ところがその後、縁あって家族が何と京都に住むことになりまして。…もともと捕物帳もの好き、シリーズもの大好きですから、再会する運命だったのですね。そしたら何と、すらすら読めるではありませんか。一つには京ことばがすんなりと入って来るようになったこと、そしてもう一つには、京の町の地理が何となくのみこめてきたために、おおよその土地カンとか山々の景色とかが、身近に感じられるようになったことが、勝因だったと思われます。
公事宿ものとしては江戸の佐藤雅美さんのものもありますが、あちらは当時の経済・法制をかいま見るおもしろさ。こちらはぐっと人間的ですが、何といっても登場人物が魅力的です。(何せ、猫のお百までが表情豊かですから。)テレビの内藤剛史さんの菊太郎も味があってよかったけれど、実際の設定はずっと若いのだと知ってちょっとびっくり。脳裏の映像を再構築してみると、ドキドキするほど魅力的です。
人間模様のさまざまを自在に、しかも京情緒たっぷりに描き出す澤田さんの筆力に脱帽。これからゆっくりとシリーズを読み進める楽しみができました。
澤田ふじ子 初読。 ★★★★★
時代物では都筑道夫、宮部みゆき、京極夏彦などを読んでいた私に、友人が紹介してくれたのがこの著者。

江戸の時代小説を読み慣れていた私にとって、初めは『京ことば』自体に多少戸惑いがあった。
読んでいてもついついイントネーションが気になってしまうのだが、慣れるにつれて逆にそれが味わい深くなる。

物語は、現役時代は奉行所でも高い地位にあった役人の妾腹の子、菊太郎を中心として、
『公事宿(くじやど)』という今で例えるなら『弁護士旅館』のような期間を舞台に展開する。
弁護士というからには奉行所がらみの事件からそうでないものまで毎回何かしらの事件が起こるわけだが、

捕り物帳よりも人情的なストーリーが軸となっていて、ラストはしみじみ、ほろりとする部分が多い。
じっくり読みたい、くせになる連作集となっている。

結末の味のほろ苦さ ★★★★★
菊太郎の設定が、テレビよりだいぶ若くて驚いた。中年男でもいい味出していると思うが、原作の方がかっこいい。事件の書留帳なので、必ず正義が悪に勝つという展開そのものより、結末の味のほろ苦さをかみしめるような、味わいが尾を引くのが良い。公事屋仲間に与えられた制裁を、お上に訴えず裏で鉄槌を加えるのが道理という「闇の掟」。一途な女の真心が叶わぬ「夜の橋」。里子に出した子供への思いが最悪の結果にあう「ばけの皮」。私だけかもしれないが、関西に馴染みがないので、活字になった京都弁の話し言葉を読むのに、ちょっと疲れた。江戸末期の、京都市井の暮らしもかいま見え、夜更かしして読みたくなる本です。
一気に読みきりました。 ★★★★☆
ストーリー展開と登場人物像のリアリティに吸い込まれるように読みました。NHKでテレビドラマ化されていて、全部は見ていませんが、原作の方が郡を抜いて面白かったです。一作目を読んでからシリーズの残り5冊をまとめ買いしました。