江戸の時代小説を読み慣れていた私にとって、初めは『京ことば』自体に多少戸惑いがあった。
読んでいてもついついイントネーションが気になってしまうのだが、慣れるにつれて逆にそれが味わい深くなる。
物語は、現役時代は奉行所でも高い地位にあった役人の妾腹の子、菊太郎を中心として、
『公事宿(くじやど)』という今で例えるなら『弁護士旅館』のような期間を舞台に展開する。
弁護士というからには奉行所がらみの事件からそうでないものまで毎回何かしらの事件が起こるわけだが、
捕り物帳よりも人情的なストーリーが軸となっていて、ラストはしみじみ、ほろりとする部分が多い。
じっくり読みたい、くせになる連作集となっている。