「事実は小説よりも奇なり」とは言うけれど
★★★★☆
物理的な長さもさることながら、登場人物に誰ひとりとして「まっとうな」人間が出てこない上に、
これがひとつ残らずすべてが実話であるという事実に圧倒される。
珠玉の詩をたくさん書いたサトウハチローの私生活の凄まじさ、それを容赦なく描き切ろうとする
彼の異母妹である著者もまた(外から見れば)波乱の人生を歩んできた人。
それにしても、ここまで書いてもいいんだろうかと心配するくらい。
読んでいくうちに、登場人物たちにエネルギーをどんどん吸い取られていくようで、いつも緊張していた。
読み終わっての感想は、「面白かった」というよりは「開放された」という表現に近い。
執筆期間が長かったせいもあるとは思うが、途中何箇所か中だるみを感じた部分があったので、評価としては星ひとつ減点。
服部坂を身近に感じて
★★★★☆
本書『上巻』の書き出しにある「服部坂」は、私が生まれ育った家の目と鼻の先にあった。毎日この坂を登って、サトウハチローも卒業した小日向台町小学校に通った私にとって、これは身近な物語である。学者・政治家・実業家の屋敷がいくつもあって独特な地域は、変転するいくつかの舞台の中で長い期間ではないが、際立った景観を添えている。ハチローや愛子の戸籍上は異母兄になっているが、血脈はつながっていない真田幸男が、旧制都立五中の担任教師であったことも、私には親近感がある。同氏はつい先日九十四歳の天授を全うされたが、文中でも別格に尊敬をもって扱われているように、人格・業績ともに逸材であった。佐藤家のたぎり狂う「血脈」とは実に対照的であることも興味深い。「下巻」において八郎の死とともに、さしも放漫に咲き乱れた花々が枯れ落ちるように、佐藤家に平和が訪れるくだりは、まさに「血脈」の何たるかを示すかのようだ。恐るべきDNAの秘密がそこにあるのだろうか。
人生です
★★★★☆
上卷で、その人生の激しさに驚き、中卷で、ちょっと、その人生に疲れ、
投げ出さないで、下巻を読むと、そこに、人生の面白みが、待ってます。
しかし、タフでなければ、生きられません。生きる前に、肉体的、精神的に丈夫であらねばならぬ、というテーマを与えられた気分です。
まだ読んでませんが本は全く問題なく届き…
★★★★★
まだ読んでませんが本は全く問題なく届きました