すさまじい先見の明
★★★★★
サブプライム問題勃発後、リーマン破綻前に書かれていますが、リーマン破綻やその後の連鎖的な金融機関の破綻、世界恐慌的な様子をものの見事に言い当てています。
この本をもっと早く読んでいれば、、、と、悔しい思いです。
格付け会社に関することにとどまらず、アメリカ権力者の内幕エピソードまで書かれていて、本当に楽しく読むことができます。
合わせて、映画「グッドシェパード」も見るとよいかも。
関係ないようで、関係あります。
グッド・シェパード
岩波新書とともに必読
★★★★★
本山教授の著作を20年以上愛読しているが,時代の趨勢を見抜く眼力にはまったく恐れ入るほかない。その時論はけっして皮相に流れず,また庶民の視点に立った姿勢はブレることがない。どの著作にも,巨大な権力の暴走がもたらす社会システム自壊への危機感と,同時代の証言を残すことへの責任感を読み取ることができる。
その最新刊である本書は,「ハイリスク・ハイリターン」とは貧乏人からむしりとる高利貸しのことであるという明快この上ない視点から,リスクの売買という歪んだビジネスがサブプライム・ローン問題として破綻するまでのからくりを,きわめて平易に解説している。
ほぼ同時に刊行された同著者の『金融権力』(岩波新書)とともに,米国一極支配と呼ばれた一時代がどのようなものであったのかを知るための羅針盤となるであろう。
碩学の精力的な情況への発言に敬意を表したい。
金融商品格付け機関に対する問題提起
★★★★☆
本書は昨今の資源高騰やサブプライム問題を素人に分かり
易く説明した一書です。サブプライムローン証券の破綻がア
メリカによる世界金融支配の支配終焉に繋がる序章であると
著者は言います。何れにしてもサブプライムローンは、リスク
を他人に押し付けて自分は売り抜くことで儲けを捻出する謂
わばババ抜きであったことが分かります。グローバルルール
として企業の透明化が叫ばれる一方で、企業買収を仕掛け
るファンドや債券発行元から手数料を取る金融リスク商品の
格付け会社の利益が確保されることの問題提起があります。
終わりの始まり?
★★★★☆
世界の信用市場の根本が崩れ去り、終わりの見えない混乱が続く中で、日本を代表する経済紙が相も変わらず「洗脳された」能天気さで購読者に非預金性の商品への投資とエマージング市場への投資を第一面でいまだに煽り続けている姿はグロテスクなものです。人間にとって一番怖いのは、知性を洗脳されてしまうことだといういい証明になっています。そういう意味ではこの作品は一種の知的な清涼剤的な役割を果たしているものです。しかしながら中身は一種のやっつけ仕事となってしまうのは仕方がないのかもしれません。英文の専門論文に頼るしかない中で、結果として多数の専門用語の訳はだいぶずれており(というよりも訳がない専門用語が多数あるというのが現実)、前後で論理が矛盾している部分,そしていくつもの慎重な限定付きながらも単純化された結論の提示もいくつも散見されます。またtimothy sinclairの「the new master of capital」の論旨に依拠する部分も多数です。ただし著者の結論である「米国による金融支配の終焉」というモティーフは傾聴に値するものです。デリヴァティヴと金融自由主義の果てに待ち受けていたものは、皮肉なことにすべてのリスクがもう一度銀行の帳簿に逆戻りするというre-intermediationであり、銀行という役割の公的性の再確認だったというわけです。そう銀行も、外交や戦争と同じく、啓蒙主義のイデオロギーの延長線上の疑似科学的な技術主義にのみ依拠した専門家(軍人、外交官、銀行家)に任せておくには余りにも重要な問題だったわけです。この後に待ち受ける金融の世界のdefining ruleとはどんなものなのでしょうか?その点については本書は何も言及していません。