トレバー・ホーンと言えばその昔バグルス時代に「ラジオスターの悲劇」をチープなキーボードサウンドに乗せ、裏声で歌って大ヒットさせた御方でありますが。最近で言うとなんと言ってもあのお騒がせt.A.T.uの作品へのプロデューサーとしての参加が目立ったニュースでした。
そんなエキセントリックな経歴を持つ男が、あの現在ミュージックシーンの良心とでも言うべきベルセパのニューアルバムのプロデュースをするなんて・・。
当然ファンからは非難の声が上がりました。
でも僕はなんとなく思いました。
「面白そうじゃない」
ベルセパと言えば地味ながらもハイクオリティーな作品を喧騒に満ちたシーンにいつも届けてくれたと言う印象があります。
そのサウンドはまさに文句の付け所のないものでありながらも、何かこの前と同じようだな・・と言う感じを残します。
そんな良心的ながらも地味な位置に甘んじがちなバンドとそのサウンドに対してちょっとした変化を与えてくれるのでは、とトレバー・ホーンの起用は予感させてくれました。
果たしてそのサウンドは確かに前作までの良心的なアコースティックサウンドを残しながらも、どこかひねくれた「味」を印象づける出来になっていると思います。
何か優等生のクラスにいたずらっ子が一人もぐりこみ、やってくれちゃったみたいな感覚。
そのサウンドを具体的に言うと「ひねくれポップ」。
僕が一聴して思い出したのが、ひねくれポップを代表するアーティストの一つ「THEY MIGHT BE GIANTS」。
彼らのどこか人を食ったような作風が、うまく今までのベルセパサウンドと融合したような・・。
前作までのベルセパの良作ながらも、どこか変化がほしいと言う印象を確実に覆す作品に仕上がったと僕は好感を持ちました。
確実にベルセパのなかでは異色のアルバムとなるでしょうが、これもまた必要とはいえないでしょうか。
僕はこの変化に対する彼らの意気込みに拍手を持って迎えたいと思います。
彼らだってロックしたかろうもんな。
はじめに聴いたときにはポップでゴージャスな音に拒否感があったけど、聴き込むとそれほど気にはならない。スチュアートの声はやっぱり独特の説得力があるし。
でも、初期にあったような、心に突き刺さるような感覚はちょっと薄れていて、「いい曲だけど、決定的ではない」といった感じの曲が多いと思う。
音楽的には、60's的な跳ねるリズムが減ったり、ヘタウマなバンドのアンサンブルが醸しだす不思議な高揚感、グルーブ感もほとんど見られなくなったのが個人的に残念なところ。
個人的には<9>が一番好きなんだけど、これはツアーではかなり前から演奏されていた、かなり前に書かれた曲なんだよなぁ。微妙。