アコースティックを基調とした純度の高いバンド・アンサンブルに、潔癖性を感じさせる旋律。そのあまりにも美しい音楽によって90年代後半、多くのギター・ロック・ファンの心を奪った「ベルセバ」。
思春期特有のうつうつとした感情をメランコリックなサウンド・イメージで表現した本作は、絶望と希望を同時に体感させるかのような、不思議な緊張感にあふれている。双子らしい2人の少女が見つめあう、どこか宗教的ムードをもつアート・ワークもすばらしい。(森 朋之)
2000
★★★★★
すでに一般的なステイタスを確立していながらも、コマーシャリズムを排した独自の活動方針をつらぬいているため、今なお謎めいた存在であり続けているグラスゴーの7人組(本作を最後にベースのスチュワートが自身のプロジェクト、ルーパーに専念するため脱退)。ブリット・アワードをもたらした98年の『ザ・ボーイ・ウィズ・ジ・アラブ・ストラップ』に続く4作目の登場だ。
仲間の家の居間に集まった日曜音楽家たちの集い…といった雰囲気の、のどかで和気アイアイ、演奏の歓びが間近で感じ取れるような音。でありながら、ヘタウマとかシロウト臭いバンドというわけでなく、彼らならではの完成した独特の作風を隅々まで行き届かせていて、揺るぎなさすら感じてしまう。トランペットやチェロを使ったバンド・サウンドはもちろん、ピアノやスネア・ドラムの響き具合、ギターの弦を指がすべる音にまで確固たる個性を漂わせていて、70年代フォークっぽいとかネオアコとかいう批評は無力に聞こえる。
ほの甘く、優美で、どこか郷愁を誘うような。しぼりたての果汁100%ジュースみたいに瑞々しくて混じり気がなくてさわやかで。しかし、ゾッとするくらいにシビアで、笑ってしまうしかないほどリアルで、インパクトいっぱいの歌詞があってこそのベルセバ。音と歌詞のギャップのおかしさ、歌われる今どきの気分など、ゆっくり味わってみなくちゃね。
小さな静かな暖かい世界
★★★★★
ベルセバのアルバムの中ではこれが一番個人的にお気に入りです☆特に2、4は大好きで今もよく聴き続けています。彼らの音楽の世界は独特の暗さと暖かさと優しさが混ざり合っていて、どの曲も耳に心地よいのです。
一番好きなアルバム
★★★★★
柔らかい泥の様な、陰鬱とした世界観。
これこそがこのバンドが他の量産型ネオアコ連中とは一線を課す所以であり、ベルセバがベルセバたる所以であった。
しかしこの後、聴くに堪えないサントラ、そしてメジャーデビューを果たすにつれ、その世界観は良くも悪くも崩壊し、街で流れるようなお洒落で華やかなポップソングを作るバンドへと変貌を遂げていくのである。
この作品は、バンドが閉じた世界から開かれた世界へと飛翔していく、そんな過渡期に位置するアルバムだと言えるだろう。
すなわちその2つのエッセンスが、非常にバランスよく配合されている作品だということだ。
ザラザラして雑で、悪く言えば地味な音作りをするバンドであったが(しかしその中にはとてもキラキラした美しい結晶が詰まっていて、インディー時代のファンはそれをこよなく愛するものだった)、今作ではそんな曲に色が付き、格段に聴きやすく昇華されつつも、しかしそれまでの世界観を決して損なっていないという、奇跡の様な世界が披露されている。
最近のお洒落全開ポップバンド的ベルセバのファンと、インディー時代の暗く陰鬱とした星屑のため息の様なベルセバのファンの、その両方が心から歩み寄れるアルバムだと思う。
私はどちらのベルセバも支持するし、当然このアルバムも大好きというわけなのだ。
ありがとう
★★★★★
素晴らしい輝きを放つ楽曲の数々。
中でも2曲目の“The Model”!
一日の始まりに聞くと清々しい生気がわいてくる様な
きらびやかな曲です。皆さんが仰っているように
他のアルバムに比べると若干統一感に欠ける印象を受けますが、
それを感じさせないほどの美しい名曲が詰まっています。
聴く曲と聴かない曲の差が大きい
★★★☆☆
ベル・アンド・セバスチャンの4枚目のアルバム。このグループを初めて知る人は、アコースティックの楽曲にお兄ちゃん風の優しい声、ときどき優しい声のお姉ちゃんも歌う音楽と考えてください。これ以前に出された3枚のアルバムのいずれかを持っている人は、とりあえず同じような音楽を期待できます。ただし、2枚目「天使のため息」3枚目「ボーイ・ウィズ・アラブ・ストラップ」に見られるようなアルバムとしてのまとまりという点では、今作はやや劣ります。つまり聴く曲と聴かない曲の差が大きい。また、過去の作品より全体的に暗い印象があります。一曲入魂で曲をかける方は裏切られない曲はいくつか入っています。アルバム全体をかけっぱなしにするという人は、少し違和感のある曲もあるでしょう。全11曲、40分51秒です。