高田三郎氏作曲の『水のいのち』は、日本の合唱を代表する組曲で、1964年に作曲されて以来、混声、女声、男声の合唱譜が実に200判以上重ねたということからもその人気振りが伺えます。「雨(Lento tranquillo)」「水たまり(Moderato)」「川(Risoluto)」「海(Adagietto)」「海よ(Andante)」の5曲の繋がりを見ても分かるように水の循環の姿を人生に置き換えた高野喜久雄氏の格調高い詩に、ダイナミックな曲を与えたことにより、不朽の名曲が生まれたわけです。自然界の輪廻とも言うべき考え方が見事に表現されています。

作曲者高田三郎氏の言葉を借りますと、『水のいのち』とは、"The Life of Water"ではなく、"The Soul of Water"とのこと。非常に分かりやすい定義で、この言葉を噛みしめながら演奏すれば、ぐっと奥行きのある表現が可能になると思っています。

敬虔なカトリック信者である高田三郎氏と高野喜久雄氏の紡ぎだすこの組曲は、半世紀近く経っても古さを感じさせず、今も燦然と輝きを増しています。
ほとんどの合唱人が知っているこの組曲を今再び演奏会で取り上げるのは結構勇気がいりますが、歌いこめば歌いこむほど味わいが増してくる作品ですので、果敢に挑戦していただければよい、と思います。

譜面は今のアマチュア合唱団の力量なら、何も難しいことはありませんし、音域的にも無理な個所はありません。ただ、内容の深さや重さをいかに上手く表現するか、といった領域になるといささか難しい曲ですので、心してとりかかってください。