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密室殺人傑作選 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ (1161))

価格: ¥1,365
カテゴリ: 新書
ブランド: 早川書房
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14の《密室》 ★★★★★
◆「うぶな心が張り裂ける」(クレイグ・ライス)

  マローン弁護士の依頼人であるポールが、刑務所の房内で、首を吊って死んだ。
  ポールは絶命する直前に、「切れなかった」という言葉を遺したのだが……。


  依頼人が精神異常のために自殺したとなると、弁護料の回収が
  不可能となるため、なんとか他殺であったことを証明しようとする
  マローン。

  彼は酒場で聴いた歌から、ダイイング・メッセージの意味を読み解きます。

  トリックというほどのものはなく、ミステリとしては薄味ですが、
  生き生きと描かれる人生の悲哀を湛えた人物が魅力的です。



◆「北イタリア物語」(トマス・フラナガン)

  時は十五世紀末。
  ところはイタリア北辺の地に建つモンターニョ城。

  イタリアへの侵攻の機会を虎視眈々と狙うフランスを懐柔するため、
  ローマのボルジア家が、フランス王に献上するはずだった緑玉が、
  城の地下宝物室から紛失するという事件が起きる。

  現場は密室状況にあり、人の出入りは不可能。
  二人いた警固の衛兵のうちの一人は首を刎ねられ、もう一人は負傷して倒れていた。

  城主のモンターニョ伯は、ボルジア家からの使臣と事件について話すなかで
  負傷した衛兵ノフリーオが、犯人の一味なのではないかと冷徹に推理する。

  ノフリーオは聾唖者であったため、伯爵は彼に犯行場面を描いた
  絵を三枚示し、どれが「真実」であるかを尋問するのだが……。


  
  一応《密室》ものに分類される本作ですが、とくに
  トリックが仕掛けられているわけではありません。

  むしろ《最後の一撃》ものといったほうが適切でしょう。


  本作は実に非情で残酷な物語なのですが、「最後の一行」を
  読むことで、驚きとともに、その真意を了解することができます。
ミステリの嫡流――《密室》を扱った不可能犯罪 ★★★★★
◆「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」(ウィリアム・ブリテン)

  エドガー・ゴールドは、叔父から遺産は一文もやらないと告げられる。

  カー作品の愛読者であるエドガーは、カーが使うような密室トリックを用い、
  叔父が遺言状を書きかえる前に、彼を殺害しようと企て、煙突の掃除をし、
  白シャツ、白ズボンを用意する……。



  倒叙形式の《密室》もの。

  エドガーが仕掛ける密室トリックは至ってシンプルではありますが、なかなかに巧妙。
  また、カーの密室講義では除外されていた煙突脱出をあえて用いるところに
  病膏肓に入ったファン心理が窺え、思わずにやりとさせられてしまいます。

  作中で、折に触れてカー作品の特徴について言及されるため、万一、
  カーを知らない人でも置いてけぼりにされることはありませんが、
  逆に、ネタバレになっているところもあるので、気にする方は
  注意してください(『火刑法廷』の結末に触れています)。


  まあ、本書を手に取るような方には、釈迦に説法だと思いますが(w



◆「長い墜落」(エドワード・D・ホック)

  霧の深い三月のマンハッタン。

  ジュピター製鋼ビルの二十一階の窓から、
  社長のビリー・カームが飛び降りたらしい。

  しかし、どこを捜しても彼の死体は見つからない。

  そしてその三時間四十五分後、忽然と消えていた彼が地面に落ちて来た……。



  これはもう、文句のつけようのない傑作でしょう。

  人間ドラマとトリックが有機的に連関し、間然するところがありません。
  作品全編を覆う雰囲気と響き合う最後の一行も美しく、激しく好みです。
密室はミステリの花形です! ★★★★☆
世界初のミステリとされるポーの『モルグ街の怪事件』以来、連綿と書き継がれてきた、一見出入り不能な場所、いわゆる密室でおきる不可能犯罪の謎。糸と針を使った機械的なものから心理的な盲点をついたものまで、考え出されたトリックは数知れず。それでもいまだに新しい密室ミステリが年に何作も発表され、密室はミステリの花形であり続けています。

そんな密室短編ミステリを集めた本書、カーやクイーンといった大御所のものからチェスタートン、ポーストの古典的名作、さらにはパロディやSFまでと幅広い作品が収録されていて、同じテーマを扱っているものの読んでいて飽きることもなく、これらの作品を選んだ編者の手腕は見事なものです。

残念なことが一つ。原本には他に二作が収録されていたのですが、翻訳版の本書では紙幅の都合で割愛されてしまったとのこと。そのうちの一作はザングウィル『ビッグ・ボウの殺人』で、文庫版で出ているので読もうと思えば読めるのですが、こういう編集はどんなものでしょう?上下二冊に分かれてもいいから、原本と同じ形で出版してもらいたかったなあ。

密室殺人の白眉がここに ★★★★★
古来から読者を魅了してやまない

「密室殺人」!
この真髄がこの本の中に凝縮

カーやロースンの古典ともいえる密室事件

マローン弁護士のユーモアもの

短編の名手フラナガンの処女作にして、傑作歴史物の一品など
読むのをやめることができないほどの内容です
邦訳のある『ビッグボウの殺人』はともかくとして

もう一編長すぎるという理由からカットされたのが
残念と言えば残念

密室殺人の古典がここに ★★★★★
サンテッスンの名アンソロジーが文庫化されて読みやすくなりました

古来から読者を魅了してやまない
「密室殺人」!この真髄がこの本の中に凝縮
カーやロースンの古典
マローン弁護士のユーモアもの
短編の名手フラナガンの歴史物など
読むのをやめることができないほどの内容です