魅入られるような龍笛の調べ
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琴を愛した嵯峨天皇に捧げる…という主題を軸にアルバムは展開していきます。
一曲〜七曲は、長谷川氏の手になる、嵯峨天皇に因んだ平安朝雅楽の復曲で、これまでに出された氏のCDと同様に、各々の曲がそれぞれに豊かで温かな安定感を内包しています。
八曲目は、『うつほ物語』の中の秘琴「栴檀風(せたふ)」の名を曲名として創作された曲です。この「栴檀風」を弾くと、夏に雪が降るなど、奇跡が起こったということですが、まさしく、夢と現の狭間に導かれるような、不思議で清らかな調べです。長谷川氏の作品には物語をもとにした曲がいくつかありますが、この曲も含めて、その調べは、物語の情景を鮮やかに連想させ、聞く者のイマジネーションを大きく広げてくれる魅力をもっているように思います。魅入られるような龍笛の調べをぜひお聞きいただきたいと思います。