肯定と否定
★☆☆☆☆
なかなか難しいのは現在社民党から否定されている村山氏を、社民党を批判しないで肯定するということであろう。自衛隊合憲を否定しつつ肯定し天皇制を肯定した人物を天皇制を否定しつつ肯定することであろう。社民党を肯定しつつ日本共産党を否定する著者のスタンスは日本共産党による9条護憲をも否定しておりこの7つの矛盾はなかなか難しいところだろう。
一国の首相を務めた村山氏の事がよくわかった
★★★★★
私は保守的思想を好む人間である。一方で、時には反権力的な本も読まなければ考えが偏るとも思っている。そのような観点から、この本を読んだ。
内容は、大きく言うと、「村山談話」の語られた背景の部分と、村山富一氏の自叙伝との二つに分かれている。読んでよかったと思っているし、まず第一におもしろかった。
先に分かりやすい方の村山富一氏の自叙伝について語ると、真にけれんみの無い同氏の人柄が伝わってくるようで、こういう人は政治家として真に適切なのだな、ということを感じた。何よりも日本の働く人達のためになろうという姿勢がよい。ダイナミックなことに挑戦する政治家がいる一方で、こういう地味な活動を続けてきた政治家にも敬意を払いたい。村山氏が首相をやめた後に大分から東京に飛行機で出かけるときに、後ろの席に座っていたら、スチュワーデスが、「一国の首相までされた方が、普通の席に座っていらっしゃるなんて、尊敬します。」と言ったそうだ。むべなるかな、である。
さて、今度は読む人によって意見が異なる部分への評である。
この本は佐高信氏との対話を通じて、村山談話、を話し合うという形式を取っている。その中で、先に世間を騒がせた、田母神元航空幕僚長の論文についてや、小泉元首相及び阿部晋三元首相の政治姿勢についても語られている。その中で気になったのは、小泉氏が山村談話を継承していながら靖国神社に参拝するのは矛盾している、と批判していることである。政教分離については確かに一考あるところではあろうが、極東軍事裁判で判決を受けた方々をいつまでもA級戦犯と称していかにも日本国民がそれを裁決したかのように言うのは、既に時代遅れではないか、と思ったものである。
そうではあるが、この本によって一国の首相を務めた山村氏とはどのような方であったのかを知ることができたのはよかったと思う。
生い立ちを勘違いしてました
★★★☆☆
社会党の党首で、ちょっとだけ総理大臣にもなった眉毛の長い村山さんの生い立ちなどの話。
右翼系から常に攻撃の的にされている村山談話(もう一つ河野洋平の談話もあるが…)がどのような背景で語られたのかと言う説明がしてあるのだが、この本ではその背景より、村山さん自身がどのような学生生活、社会人生活を送り社会党の党員として活動していたのか…と言うことが詳しく書かれていて、そっちの方がおもしろかった。
普通政治家というのは、
親父さんの地盤を引き継いでなる人
官僚から政界に打ってでる人
何らかの大きな団体の代表としてでる人
松下政経塾出身の人
とかが普通だと思う。特に自民党や民主党の人たちは、人生のエリートとでも言うか、一流学校を卒業して一流企業に就職して、時期を見て政界に…と言う人が多いような気がするから、私は全然根拠なく村山さんも東大とかでて政治家になったのだろうと勝手に思っていたが、全然違った。
そもそも村山さんは大分の漁師の息子で、家も貧しく、貧乏人の子沢山で学費もなく、高校も出れずに途中で大分から集団就職みたいにして東京にでて行き旋盤工の仕事に就くがあまりの労働条件の悪さにその会社を飛び出し印刷会社に転職し…と本当に最下層のような生活を送っていた。
何とか夜間の大学に潜り込んで社会主義の先生に従事して労働組合の運動に入り込む。
大分市議や県議を経て、国会議員に進むのも本人の意思ではなく回りからの要請と言うことで知らず知らずのうちに総理大臣まで上りついてしまう。
本当に謙虚で欲がなく私利私欲を捨ててすべては党のため国民のためという感じの一途な人だった。
こんな人柄の政治家、総理大臣がいたのだ…と思えただけでもよかったし、できたらもう少し大臣やってもらっていたら、日本もここまでおかしくなってなかったのでは…と思える。
あの村山さんを引きすりおろしたのは、小沢一郎である。
村山元総理の歴史観
★★☆☆☆
村山談話のには「わが国は、遠くない一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで・・・・・」という一文があります。
談話が発表された時、新聞記者に「国策を誤り」とは「何をを指すのですか」と質問されて村山総理は答えることができませんでした。
この本にもその答えは何も書いてありません。書いてあるのは、ただ、戦争の悲惨な思いでと戦後の村山氏の履歴だけです。
村山氏と佐高氏の本ですから読まなくても、想像がつくよと思われる方が多いでしょうが、それは当たっています。悲しいまでに。
この本を読んでも評価がわれる (?) 「村山談話」
★★★☆☆
タイトルだけでなく内容においてもいわゆる 「村山談話」 にこだわりがあるが,「村山談話」 についての本というよりは,村山 富市 というひとがどういう政治家だったのかをあきらかにしてくれる本といえるだろう.
総理大臣になるとはまったくかんがえられていなかったひとが総理大臣になり,後藤田正晴によれば 「保革の対立の中でやらなければならないけれどできなかった仕事 [中略] がある内閣のときに解決したんです」 というだけの仕事をした. しかし,この本を読んでもやはり一方では総理になるはずでなかったひとがなったことによる限界も感じとれる. 「村山談話」 もそのどちらであったのかは,ひとによって評価がわれるということなのだろう.