まずは90ページをかけて、ハングルの説明をする。子音と母音ひとつひとつについて、名前、形、読み方、その言葉を使った単語例を挙げている。漫画家である著者が、キャラクター「モジャ君」のカラダを使って、視覚的にわかりやすく文字の覚え方を伝授する。その覚え方はややこじつけともいえるが、楽しいイラストの強引な意味づけに笑っているうちに自然と覚えてしまう。
こうしてハングルが読めるようになると、「文法は気にせず、とにかく話してみよう」に進む。ここに登場するのがキャラクター「ワニ君」である。ワニ君の頭、胴体、尻尾に納まる3文節以内の文章を、入れる単語をいろいろに変えて覚えていく。文例は買い物や食事の場面を想定した簡単なものばかり。文法にこだわらなくていいじゃないか、「ラーメンが食べたい」「ビールをください」と言えなくても、「ラーメン食べたい」「ビールください」で十分通じるのだからと著者は説く。
韓国に行って驚くのは、街中にあふれるハングルの看板である。これが単なる棒や丸の記号の羅列にしか見えないか、意味がわかるかで旅の印象は大きく変わる。
おかしな言い回し、おおいに結構、わざと韓国の方言であいさつしてみるのはどうだろう。それでバカウケしてもらえば、いっぺんに友だちができるのだから。著者自身のそんな体験が本書にはちりばめられている。韓国語を勉強するだけでなく、韓国人の友だち作り方も学べる、至れり尽せりの楽しい入門書である。(篠田なぎさ)