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警察庁から来た男 (ハルキ文庫)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川春樹事務所
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ここにキャリアの神経とノンキャリアの信念が融合される ★★★★☆
道警シリーズの二作目です。この作品も前作同様に不祥事を暴くという体裁。もちろん愛すべきキャラクター達も引き続き登場しますが、
表題通りここでの主人公は警察庁から来た男と言っていいでしょう。監察官としてやってきたまだ若い警視正。彼という異分子が、巧妙に
仕組まれた異物をえぐりだす。一つ一つは取るに足らないもののように見えて、実は背後にある大きなものへと繋がっている。
その過程で垣間見せるキャリアの神経(ルール)とノンキャリアの信念(スピリット)が激突しながらも結合していく。そのさまが実に
スリリングな魅力となって最後まで飽かせることがない。問題提起を主題に置くと往々にして暗くなっちゃうけど、そんなことないのが
凄いよね。冷ややかな目線を持ちながらも、やる時は力技でやってしまうところがある意味誰にでも優しいな。この重いテーマで、この爽快
な読後感を演出できるところに拍手だ。
キャリア監察官 ★★★★★
警察小説によく出てくる厭味なキャリアと違って、これに出てくるキャリア監察官藤川にはすごく共感できた。


最後の藤川と犯人のやりとりの場面でグっときた。


もちろん佐伯、新宮、津久井、小倉の活躍も見逃せない。
警察内部の不正と闘う―現場捜査員の悲哀も描く ★★★★☆

 作者の佐々木譲氏は、去る1月14日、『廃墟に乞う』で第142回直木賞(2009年下半期)を受賞した。同じ北海道に住む人間として、この大きな賞を受けたことを非常に喜ばしく思う。それはさておき、この小説は『笑う警官』(07年,ハルキ文庫)に次ぐ、架空の存在である“札幌大通署”の警察官達の活躍と悲哀を描いた作品だ。前作でも警察内部の腐敗に焦点を当てていたが、本作でも北海道警察内のノンキャリア達を中心とした「裏組織」の不正をテーマとしている。

 佐々木氏が道警の生安(生活安全)部門を「警察小説」の題材として取り上げているのは、一つに02年、道警の生活安全特別捜査隊に所属する、銃器取締りのエキスパートであった現職警部が覚せい剤取締法違反で逮捕される、という衝撃的な事件、そして何より、03年に露呈した「道警不正経理問題」に係る元釧路方面本部長の「内部告発」などが背景となっているようだ。この元方面本部長は、生活安全部長の前身である防犯部長も歴任し、佐々木氏と対談も行っている。

 今はもう無いと信じたいが、生安以外の部門でも取締対象団体等との癒着や相互依存・利用の話を、小耳に挟んだことがある。それはもはや「情報収集」の域を遙かに越えるものであった。さらに「不正経理」…現場の捜査員達は、必要な捜査費(国費)や捜査用報償費(道費)等を執行できず、自腹を切って協力者を運用し、手弁当で捜査活動を行っていた。そういった「現場」の“やりきれなさ”も、本書の中で佐伯宏一警部補に「回転寿司」を通じてさりげなく語らせている。
結構面白いが・・・ ★★★★☆
前作の半年後が舞台。
他のレビューにもあるとおり、前作を知らなくても問題はないけどやはり知っていたほうが面白さは増します。

ストーリーとしては、道警内部に腐敗があるのではないかと疑った警察庁から一人のキャリアとノンキャリアが乗り込んできて徹底的に過去の事件を洗い出すんですが、その助っ人で前作の登場人物が活躍します。
また、主人公ともいうべき佐伯刑事は過去に事故で片付けられた風俗ビルの転落事故の遺族の訴えを聞いたことから洗い直しをはじめます。

犯人にそこそこ意外性もあり、真相はまぁ若干拍子抜けしなくもないんですが、このページ数でこの内容なら十分満足できると思います。
暇つぶしにお勧めです。
また、警察内部の描写が細かく警察小説が好きな人なら満足するのは間違いないのではないでしょうか?
キャリア官僚が正義の味方だ! ★★★★☆
笑う警官の続編。この作品だけ読んでもOKだけど、せっかくなら笑うを読んでから読んでほしい。
2つの作品につながっている事件の背景が解明されるから。
笑うより大部スマートで読みやすい。事件の展開が分かりやすい。

興味深いのは前作が巨大警察組織に立ち向かい同僚の無実を証明する若き戦士たちの活躍を描いていたのに対し、今回は、これまでどちらかというと組織側の代表で悪の象徴的な立場の「キャリア官僚」を正義の味方に変え、前回同様に警察組織の悪をあばく若き戦士たちの「指揮官」として活躍させている点。
なぜ、キャリア官僚を一転正義の味方にしたのか?? 著者の何が心変わりしたのか??

こんな若きキャリア官僚がいるとは想像しがたい。道警に監察に来たこの官僚を古い方法で接待する道警幹部の姿の方が実にリアルに感じる。

捜査関係者のすぐ近くでおきる殺人や最後の犯人逮捕の際の発砲は、前回にはない劇場型の盛り上がりに進化している。事件が読み手のすぐ近くで起きている感がある。

ただし、今回の道警の闇は、最初に大きく広げた割には小悪人的な闇であり、事件の背景としては少し拍子抜けの感はある。
前作同様、全体としていいんだけど、期待すると逃げられるという印象である。
手軽に読める警察小説としての地位はこれで確立させたのではないだろうか。