60年代半ばのディランは、彼の世代の声を代弁する社会派シンガーからシュールなエレクトリック派詩人への跳躍を遂げた。この変身はオーディエンスの罵声を浴びることになった。その様子をもっとも雄弁に物語っているのは、本作に出てくる次のやり取りだ。ある熱心なファンが観客席から「ユダめ!」と叫ぶと、他の客も野次を飛ばしはじめる。怒ったディランは「僕は君らを信じない。君らは大うそつきだ」とやり返し、バックを務めるホークス(後にザ・バンドと改名)に向かう。そして「Like a Rolling Stone」のイントロが流れ始めると、「デカい音で!」とかけ声をかけた。歴史的な瞬間だ。すでに時が証明していることだが、この時のかけ声は正しかった。(Steven Stolder, Amazon.com)