待ちに待った、後期3部作の再販
★★★★★
77年、「雨の日と月曜日は」、78年、「スカイラーク」の東京録音に続いて、79年ニューヨーク録音。
アン・バートンはオランダ人ジャズシンガーであり母国語は英語ではありません。これは彼女のアルバムに共通する、技巧を駆使するのでなく、素直に曲に向き合っている姿勢に少なからず影響を及ぼしているのではないかと思われます。
選曲がいいです。「 All or nothing at all 」はビリー・ホリディが歌うそれと比較しても楽しめます。「ニューヨークの想い」はビリー・ジョエルのヒット曲。あのころ聴いたファンも彼女のヴォーカルに魅せられるでしょう。
彼女は、小人数の聴衆を前にして持ち味が発揮されるシンガーでして、往年の巨匠のようにアレンジを効かせて歌う、大ステージ向きのシンガーとは違います。
静かな夜に聴くにつれて、私たち一人ひとりに語りかけてくれるような優しさに包まれます。
前期2部作といえば67年、「ブルー・バートン」と69年、「バラード&バートン」です。「サニー」と「いそしぎ」を聴きたいがためにこの盤も持っています。
作品自体に文句のつけようはありませんが、1時間を超えるアルバムに慣れてしまった身には収録時間が短いのが惜しい。前者は39分、後者37分、当盤にせよ42分。アナログ時代の作品ゆえ仕方ないことですが、もう少し曲に浸っていたいところで終わってしまうのが唯一残念です。アン・バートン。お勧めです。