八角朱塗りの天主には不思議な魅力がある
★★★☆☆
織田信長の居城として、本能寺の変の約3年前に天主が完成、本能寺の変とともに灰燼に帰す安土城には、その役割・運命ともに興味を引かれる。
資料の収集・吟味、現地調査を経て安土城を復元するその試みの過程をしるしている。城の構造図や立面図を含み、また関連資料についてのまとめがあり、見通しが良い。復元した上で、安土城の持つ政治的意味、信長の構想と歴史的意義についての考察がなされている。
歴史的建築物の復元過程が、これほどにさまざまな要素を含むとは思っていなかった。構造・内装・外装を含む検証には結局のところ曖昧さがある。例えば外壁のどれだけの部分が漆喰だったかとか、窓枠がどう装丁されていたかなど、詳細に踏み込んでいけば必ずどこかでわからない部分が出てくる。
そうした明確な部分と不明確な部分を切り分けて、復元結果を評価しなくてはいけないことを改めて思った。