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一号線を北上せよ<ヴェトナム街道編> (講談社文庫)

価格: ¥540
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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思い出したこの排気ガスの匂い ★★★★☆
 25年程前に住んだタイ・バンコク。ある日、ホテルで「サイゴンから来た妻と娘」の著者の講演があるからと聞きにいった。そのときの「人間は16歳までおなじ言語で育たないと、思考の力を持つことができない。」と云うようなことを著者は話し、サイゴンから来た娘が戦火の中で同じ言語で教育を受け続けることができなかったことから来る表現力の弱さ、不幸を私は著者の話からつよく印象ずけられ、心に残ったのでしたが、そのサンケイ新聞の特派員の方の突然の訃報をきいたのでした。その後、杜撰な私はその人の名前を忘れてしまい、でも16歳云々の話は時々思い出して誰だったかしらとか思っていました。
 なんと、沢木耕太郎さんがサイゴンへ行くことになったのは、その人、近藤紘一さんとの約束から始まったそうです。やっと、その名前に会えた私はあの頃のバンコクの排気ガスの匂いとともにサイゴンにもとても親しい気持ちを持つことが出来たのでした。
 バンコクに赴任してらした方、あの頃のなつかしさに会うことのできる「一号線を北上せよ」です。
濃密で中身のない旅 ★★★★☆
・この旅をせずにいられなかった、一号線を北上せよという内なる声は、著者の中に遂行せずには未完了のままにあった思いとしてくすぶっていたのだろう。
・旅が最も象徴的だけど、内なる声に惹かれて行動に移さざるをえないものは、ひとの中にいつの間にか生まれてしまう。・だからって、旅をしたことで何か具体的なものを得る訳でないし、かえってもっと袋小路にはまることもある。
・でも著者の旅をいいなあと思ってしまうのは、描き込まれた描写に自分も一人の男と同じ目線でものを見る疑似体験をさせてくれ、読後に旅を終えたような思いをさせてくれるからだろう。
・フォーや屋台の食事がすごくおいしそう。
「ワレ到着セズ」の続き ★★★★☆
「深夜特急」の著者沢木耕太郎氏が50代になってベトナムを旅した時のエッセイです。
近藤紘一という人の「サイゴンから来た妻と娘」という著作とカメラマン横木安良夫の「サイゴンの昼下がり」という本に触発されてホーチミン(サイゴン)に向かいます。沢木氏が書いているように、「深夜特急」のころのような若さと体力に任せて好奇心が向くままにあちこちに首を突っ込む、という印象は比較的少ないかもしれません。それでもこの方の人の好さなのでしょう、面白い人たちが集まってきて起こるエピソードの数々は「深夜特急」と同じようにスイスイ読めて、相変わらず「この旅(本)が終わらなければいいのに!」と思わされてしまいました。