1970年の『Sunflower』をビーチ・ボーイズ絶頂期の1枚と見なすリスナーは数多い。たしかに、ウィルソン兄弟が当時感じていたにちがいない混迷――レーベルと苦い決別を果たしたのと同じ頃に、創作面の中心だったブライアン・ウィルソンが表舞台から身を引いた――に似合わない成熟とトータル性が備わっている。けれども、『Sunflower』は決して『Pet Sounds』ではない。「At My Window」「Slip on Through」といったトラックには、感傷的なポップスへの見苦しいまでの入れこみっぷりがあらわれている。また、「It's About Time」はマーヴィン・ゲイの「What's Going On?」を薄めたような曲だ。だが、デニス・ウィルソンの手がけたことのほか美しい「Forever」と時代を超えた「Tears In The Morning」によって、アルバムのバランスはいくらか軌道修正されている。
一方1971年の『Surf's Up』は、寄せ集めアルバムと言ってまちがいない。デニスは兄ブライアンの亡霊に圧倒されるばかりだし、マイク・ラヴのえせポリティカル・ソング「Student Demonstration Time」はリスナーを戸惑わせるだけだ。環境運動についても何度となく触れている。だが幸いにも、ブライアン・ウィルソンの信じがたいほどすばらしい2曲――ブラスを織り交ぜたタイトル曲(棚上げされた『Smile』セッションの代表曲の1つ)、病的なまでに内省的な「Till I Die」――によって救われている。『Sunflower』と『Surf's Up』を1枚に収めたこのリイシュー盤には、ウィルソンの伝記を執筆したティモシー・ホワイトによる新たなライナーノートも付いている。(Jerry Thackray, Amazon.co.uk)