スター前夜二夜
★★★★☆
やっと、とうとう、いや、やっぱりと言うべきか、初期The Doorsの代表的ブートレグ音源の正規リリースです。サンフランシスコでのギグはフィルモアやアヴァロンがメインで、J.Airplaneの根城であったこのマトリックスでの演奏はその練習台であったらしく、緊張感よりリラックスした自由な雰囲気がより強く漂っています。3/7と3/10の演奏のうち、曲名不明のジャムを除くと、重複したオリジナル曲以外は全て収録されています。ただし音源通りの完全版ではなく、DISC1は1stをDISC2は2ndを意識した曲順になっているために、音質(3/10の方がやや良)や流れの点で少し不自然になっているのが残念です。また、重複曲はモリソンの喉が不調(3/10)で、その分レイの張り切りぶりが目立つ曲が多く、曲自体の出来で必ずしも選ばれたのではないのではとの疑問が残ります。
しかし、まだ皮のスーツを纏ったカリスマのいない、ショービジネスにも毒されていないバンドの瑞々しい演奏は、後のルーチン化されたそれとは一味違う魅力があります。曲のルーツを想わせるギターで始まる珍しいアレンジのLight My Fire、怒気と邪気を含んだ叫び声を上げながら、クライマックスへと至る暴力的なThe Endは特に聴きものです。また、カバー曲はモリソンの我流ブルースシングが合うもの以外はイマイチというのは、初期から変わらない特徴だったのがこのアルバムを聴くとよくわかります。