子供にもわかる魅力
★★★★★
酒井駒子さんの絵が好きでこれまでにも娘に読んできました。でもこの本はどちらかというと大人向けなので4歳の娘にはまだ無理かもと思いつつ
読んでみると何度もせがむくらい気に入ったようです。
どこが好きなの?と聞くと
「砂糖ちゃんが可愛くてかまきりが面白い」
「緑の中のオルガンが素敵だ」
「女の子がママのキャミソール着てママに見つからないように外に出て行くのがドキドキする」
のだそうです。
子供にもわかるんですね。この不思議であいまいで引きつけられる絵本の魅力・・・何度でも読み返したい絵本です。
子どもの“無垢な孤独”を描ける人
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『金曜日の砂糖ちゃん』
一瞬死んでいるの?と思わせるような閉じた瞼の重み‥
女の子のはかなげで柔らかい質感。
『草のオルガン』
黒づくめの孤独な男の子が寄り道する場所。孤独な遊び‥
『夜と夜のあいだに』
女の子は鳥かごを夜中に開けるの。その意味は‥。
ドキン!と余韻を残す最後の短い言葉‥
酒井子駒子さんの絵はなんて叙情的なんだろう‥。
板の上に描かれたような、かすれ感。
かもし出す静寂と、いたいけな風情の子ども。
一人ぼっちの時間さえ楽しみに変えてしまう子ども達の天性。
酒井さんは、子どもを知っている人。
子どもの頃の“無垢な孤独”を描ける人でもある。
フランスのヌーベル・ヴァーグ時代の
映画を観ているような作品。
欧米の書店に置いても充分通用するでしょう。
存在の秘密をみつめるまなざし
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子どもの表情を描かせたら、この作家の右に出る者はいない。
『金曜日の砂糖ちゃん』
眠る砂糖ちゃんの表情は、観るたびに触れたくなるほど愛しい。
そんな砂糖ちゃんに惹かれて、静かに見守る生き物たち。
なかでもカマキリがご執心というくだりと、描かれるリアルな仕草は、
甘さに流れないこの作家らしい切れが効いて小気味いい。
『草のオルガン』
街はずれにぽっかりできた空き地の、懐かしいたたずまいを思い出す。
そこで男の子が遭遇するオルガンと、集まる蝶にバッタにカラス。
空気の抜けたオルガンのたてる音と彼らのささやきが聴こえそう。
『夜と夜のあいだに』
はっとするような女の子の表情や仕草は、こ惑的ですらある。
夜と夜のあわいに旅立って、もはや帰ってこない。
扉の向こうにひかえる犬たちは何の化身か。
どれも読み返すごとに余韻を残す。
本の装丁も見事。
「不思議」を超越した甘美。
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老若男女問わず、それぞれに深く感じさせる何かを内在した、とても強い世界観と、ガラスのように儚い描写が共存した、素敵な絵本。3つのお話が入っています。
暴論なら「不思議・シュール系」にカテゴライズされてしまうのでしょうが、それだけでは魅力の多くを見落としてしまうでしょう。
思わず手に取ってしまう仄明るく魅力的な表紙、読み始めればしばしば現れる断絶的な黒によるメリハリと、飽きさせません。
どこか往年の「みんなのうた」が有していた世界観のようでもありますね。
心地よく迷い込めるようなおとぎ話にしばらくひたってみたい方、うってつけの一作だと思います。
リアルな記憶なのか幻想なのか・・・
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三つのお話で構成されていますが、最後のフレーズに捕らわれて購入してしまいました。
心の奥深くに眠っている幼児期の記憶や感覚を呼び覚まされる絵だと思いました。リアルな記憶なのか幻想なのか・・・。
それっきりもどっては来ない。と、言うことはもう二度とこの世界には戻れないと言うことでしょうか?