トムが興したトランジション・レーベルからセシルはこの一枚で1955年にデビューする。そしてディキシーランド・ジャズ出身でセシルから音楽理論を習っていたスティーブ・レイシーもこのアルバムに参加しモダンジャズにおけるソプラノ・サックスの先駆けとなる。
パーカーやバドの演奏を実際に見たこともあるというセシルはエリントン、モンク、ホレス・シルヴァーなどの影響を自分の学んだ音楽理論と結びつけようと試みており、まだ見ぬフリメ?・ジャズの先駆けとなって、その後60年代にはジャズ革新のリーダーシップをとっていく。
一方プロデューサーのトムは、トランジションをたたんだ後もカーティス・フラー、ブッカー・リトルなどを手がけ、さらにはサン・ラの監修まで手がけた後、ジャズから離れてボブ・ディランの「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」、それからサイモン&ガーファンクルの「水曜の朝、午前3時」、マザーズ・オブ・インベンションの「フリーク・アウト!」「アブソリュート・フリー」、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ」(アンディ・ウォーホールは表向き)、「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」といった大物ミュージシャンのデビューに立会いプロデュースし!、フォーク、ロックの革新に大きな役割を果たした。
モンクやエリントンの曲を自作曲と並んで演奏しているこの1枚は、ポピュラー・ミュージックに多大な影響を与えたミュージシャンとプロデューサーのささやかな出発点でもある。