1、2年経ってしまうと、時間感覚がズレて、論説の風刺の面白さが損なわれてしまうような気がするからです。
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大学生の英語の勉強にもなるのでは。
が、しかし。論理を組み立てていってへえ、そうなんだと思わせる、クルーグマンならではの「目からウロコ」な感動は、この本には余りない。しごくまっとうではあるけれど、政治的な批判も少なくないし、前作とどっちか一冊読めば、充分じゃないだろうか。
イラク戦争については、大統領就任初日から計画していて、9.11事件を戦争への口実として利用し、大量破壊兵器の存在も原爆開発の兆候もフセインとアルカイダとの関りも一切存在しないのに戦争に突入―――その結果、国内の戦闘準備体制の弱体化にも拘らず、戦闘旅団の殆ど3分の2をイラクに塩漬けにし、膨大な戦費による財政赤字を抱えながら、先の見えない戦後処理に足を取られて苦慮している。
緊急度の高いタリバンの勢力回復、最大の危機北朝鮮、十分なテロ対策、米本土の港湾等公共施設の防衛治安維持等の重要問題には殆ど手がつけられない米国の窮状を活写している。
経済的には、高所得者への減税は経済成長の鍵とする「サプライサイド経済」を信奉し、記録的な財政赤字に直面しながらも更に大規模な減税を推進し、財政危機を口実にして医療保障や社会保障等の国民の福祉を切り捨てる「獣を飢えさせろ」戦略を取っていると批難。ブッシュ政権の恒久減税を支持し社会保障制度の削減を提唱しているグリーンスパンを「厚かましさの巨匠」だとまで激しく糾弾している。
営々と築き上げてきた資本主義のセイフティネットの破壊、二大政党政治の終焉、財政赤字によるドル体制の危機等々、「現在の政治体制を認めない保守派の革命勢力」の危険性に警告を発している。現在も健在なNYタイムズ電子版のクルーグマンのコラムを読むのも楽しい。