アナログの手段しかなかった時代の記者達の執念に敬意
★★★★☆
確かにウォーターゲート事件について、知識がないと、鑑賞が辛いと思います。そして、多くの関係者の名前が出てくるので、一度で理解するのは、難しいでしょう。
ただし、それを差し引いても、一度は見る価値のある作品。
ニクソン失脚からわずか数年で制作されたという事にも称賛を贈りたい。
パソコンもインターネットも、ボイスレコーダーもなく、電話も黒電話のダイヤル式、もちろん電子メールさえない時代の、ワシントン・ポストの記者達の努力と根気は凄い。ペンとメモとタイプライター、電話、インタビューで、事件の核心に近づいていく。R・レッドフォードとD・ホフマンの二人の記者が、図書館の膨大な貸出票を一枚ずつ調べていくシーン、二人の頭上のアップから、ロングショットになりカメラが徐々に高く引き上げられていく。気の遠くなる作業を観客側も一緒に行っているような感覚にさせられた。
助演男優賞を受賞した、J・ロバーズは、台詞を言わない間でもただそこにいるだけで、存在感がものすごい。
ホフマンもレッドフォードも、若くて勢いがあって、この作品に心酔して芝居していたのが感じられる。
ラストシーンに、再選された「ニクソンの大統領による就任式」の映像が、ワシントンポスト社のいくつものTVに映される。その背後で、いつまでも黙々とタイプを打ち続ける二人の新聞記者達の姿が、シニカルだった。
2大俳優の存在感。作品のよさを味さうには、予習が必要かも。
★★★★☆
若き日の、レッドフォードとホフマンの競演を味わえる作品。しかし、ストーリーを理解するには、ウォーターゲート事件についての予備知識が必要。
強烈なメッセージ
★★★★★
演技を評価するには、役者のナマの声を確認するのは勿論必要である。この映画は、一度目は字幕で、二度目は吹き替えで観る方をお薦めする、ネイティブやよっぽどの政治研究家でもない限り、この映画の会話を全て理解するのは不可能に近いであろう。
ニクソンが辞任後、僅か二年でこの映画は公開された。
この映画の最も重要なメッセージ、それはジェイソン・ロバーズ扮する編集主幹が二人に言うこの台詞「報道の自由は、憲法にも保障されたアメリカの自由の基本なのだ。」
二人のジャーナリストの地道な調査は、アメリカのメディアの公正さ、自浄作用の素晴らしさを世間に知らしめ、世界中に多大な影響を与えた。
テロの名の下に国民やメディアを監視し、抑圧するブッシュ政権、果たして彼等にこのメッセージは伝わるのであろうか?
大満足
★★★★★
大好きな映画で、旧版のクオリティーに不満がありました。
画質に関しては「劇的」と言って良いほどの向上です。
ワーナーのリマスター物は「ライトスタッフ」「カッコーの巣の上で」に続いて三枚めですが、いずれも実に丁寧なリマスターが施されており好感が持てます。
次は「2010年」あたりお願いしたいのですが。
地道に、黙々とタイプライターを打ち続ける姿が極めて印象的。
★★★★★
1950年代、マッカーシーと共に"赤狩り"に狂奔し、ハリウッドのリベラル派映画人を震撼させ、ジョン・F・ケネディの暗殺時には、それに関与したと噂され、大統領就任後は、終始対ソ強硬姿勢を貫いた、筋金入りの反共主義者リチャード・ニクソンが、自己の再選の為、民主党本部盗聴を示唆しその政治生命を絶たれた、世紀のスキャンダラスなウォーターゲート事件を、彼を追い詰める契機となったワシントン・ポスト紙の2人の若手記者の取材活動を軸に、サスペンスタッチで描いたアラン・J・パクラ渾身の力作。公開時、専ら新聞社のオフィス内で繰り広げられるその台詞の多さに、字幕スーパーが、オフィスの白さに被り、読み取り不能で、只でさえ複雑怪異な人脈と政治メカニズムが、更に分かり難く、鑑賞後、大枚はたいて、ウッドワード、バーンステイン共著の原作ノンフィクションを読み通した記憶がある(笑)。昨年、当時のFBIのナンバー2が、自分がディープ・スロートだと名乗り出たが、実は、ニクソンは、腹心のキッシンジャーやヘイグに裏切られ、その背後には民主党系のグローバリストたちが暗躍していたという説も根強く、正に、魑魅魍魎たちの権力闘争の中で、"正義"と"功"に意気込む記者たちは、それに踊らされていた感もするが、ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンというニューシネマを代表するスターが、地道に、黙々とターゲットを追っていく過程はやはりスリリング。彼等をサポートするマーチン・バルサム、ジャック・ウォーデンの老練さ、そして、この翌年「ジュリア」でD・ハメットを見事に演じてしまったジェースン・ロバースのハードボイルドな男気も見逃せない傑作だ。