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桜の実の熟する時 (新潮文庫)

価格: ¥529
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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旅立ちの時季 ★★★★☆
実が熟する時といえば、なんとなく子をなし、育てる世代をイメージしていた。だから、読み始めて、主人公が学生であることと、タイトルがうまく結びつかずにいた。
読み終えて、私のイメージは「木」を主体としていたことに気づいた。
主人公に重ねられるべきは実を蓄えた木ではなく、熟して地に落ちんとする実そのもののほうだ。
明治学院での学生生活。初々しい、無邪気な時代が過ぎつつあるところから小説は始まる。信仰に挫折し、勉学に挫折し、年上の女性への恋が終わったところから始まることになる。
自分自身の命を延べようとして、初めて自分自身の足で地に立とうとする、そういう季節を描いている。
そういった愛着関係での不全感、自己の中での達成や成功への欲求の不全感が渾然となりつつ、やがて熟していくのだ。
『春』と併せて読むべし ★★★★☆
この作品を読んでいなければ、かの名作『春』の前半は意味がわからないだろう。だから『春』のプロローグとしても、また『春』の面白さをより一層味わうためにも必要である。そしてこの作品は『春』ほど暗くはなく、明治時代の学生生活を仮想体験するのに最適。それにしても主人公は孤独な思いをしているのだが、ショーペンハウアーが言うように、才能の優れた人が孤独になるのは当然である。だがそこに藤村の苦悩があり、その苦悩ゆえに数々の作品が生まれたのだろう。