コンビニより多い、日本最多の飲み屋。
★★★★★
おしゃれなカフェやステキなバー、斬新なレストランがない町は日本中にたくさんあるけれど、スナックのない町はない。
よく考えれば日本で最も多い社交場なのに、ちゃんとしたガイドも研究もない。
ごく一部の都会の人が、ごく一部のステキな場所でワインを飲んでいるあいだ、日本人の9割以上はスナックで水割りを飲んで、歌っているのだ。
「ヤンキー」であり「相田みつを」であり、「ワンルームマンション」でもある、日本中に偏在していて日本人が大好きなのに、メディアが決して取り上げることはないもの。
それらを宮本常一のように黙々と記録してきた著者のテーマがスナックに向かったのは、ごく自然なことなのだろう。
日本の「コミュニティ」について議論・研究するなら、スナックとそのママの役割を抜きには語れないはずだ。
スナックを黙殺するメディアやアカデミズムへの怒りに、それをやるのが自分しかいないという使命感をのせて、著者は今日もスナックで一曲こぶしをきかせているだろう。
それにしても、ママたちの愛らしい魅力は、本書を読んでもらうしかないのだが、あらゆるスナックにステキなママがいて、ママには歴史がある。
日本中に山ほどスナックがあるし、出している酒や料理が特別なものではないのに、通ってしまう理由はただ一つ、ママの魅力と笑顔なのだ。
著者の現代民俗学の最新の成果であり、日本で減りつつある愛すべきママたちへのレクイエムでもある。