極めて分かりやすい
★★★★★
「土着の神」
これは、神道とか、宗教とかとは別の日本人の心ではないのでしょうか?海から登る朝日に手を合わせる、森の中のせせらぎに手を合わせる、変わった形の雲に思いを寄せる・・・というさりげない行動は、「宗教」として教えられたものではないし、親や学校で教えられたものではない。しかし、かなり多くの日本人がそうした心情を持っている。
これを「宗教」としてくくるとややこしくなるが「土着の神」に対する敬虔な信仰心ととらえれば、日本における「宗教」が諸外国とは異なることもわかってくるのではなかろうか?
本書は、政治的に仏教を「強制」された中世において、日本人が「土着の神」を「信仰」していたことを丹念に論証している。
このことと、その後悪役になっていく神道とは別の問題であるのか、神道は「土着の神」への素朴な敬虔な信仰と関わるのか・・・?この点が今ひとつよく分からないのは残念だったが、戦後の政治的な「政教分離」と違う世界がもともと日本にあったことを示す良書である。