不況下のブルーズ
★★★★★
そういう人は今多いと思いますが、ジョー・ヘンリーがプロデュースと聞いて、
「おお」と思い購入しました。
ジョー・ヘンリー絡みはハズレなし、という状態なので・・・
サリフ・ケイタまでプロデュースしたのにはびっくりしました。
「不況下のブルーズ」をテーマに、1930年代と現代を交差させている感触でしょうか。
同種のテーマに『Dark was the Night』というRed Hot関係のコンピがありますが、
個人的にはこのアルバムの方が好みです。
(どちらのアルバムにもブラインド・ウィリー・ジョンソンのカバーがあります)
ジョー・ヘンリーが関わっているので、空間を感じられる素晴らしい録音です。
『Anthology of American Folk Music』と交互にこのアルバムを聴くのも一興です。
Dark Was the Night: Red Hot Compilation
DARK WAS THE NIGHT
I'm Not There
Anthology Of American Folk Music (Edited By Harry Smith)
伝説的フォーク・シンガーによる大恐慌時代のブルース集
★★★★★
今年(2009年)はボブ・ディランの新作も登場したが、その少し前に発表されたのが、ディランにも影響を与えたとされる伝説的フォーク・ミュージシャンで昨年8月に喜寿を迎えたランブリン・ジャック・エリオットによるこのアルバム。これは、ボブ・ディラン役を女性も含む6人の俳優が演じた映画『アイム・ノット・ゼア』のサントラの仕事でジョー・ヘンリーと出会ったことをきっかけに、そのジョー・ヘンリーのアイデアから生まれたとのことだ。
内容は、某国の首相言うところの「百年に一度の危機」にふさわしいともいえる、1929年に始まる「大恐慌」時代のブルースのカヴァー集で、ブラインド・レモン・ジェファスンやサン・ハウスなどブルースの殿堂にその名を刻む偉大なブルース・ミュージシャンの作品を集めている。「フォーク」と言えば白人の音楽、「ブルース」と言えば黒人の音楽、といったイメージが強いが、ともに民衆の生活と強く結びついて人々の心の支えとなってきた音楽であり、実際には必ずしも対極にあるものではない。今作のエリオットは、アコースティック・ギター弾き語りではなく、ディランの新譜でも活躍しているロス・ロボスのデイヴィッド・イダルゴやブライアン・ウィルソンとの共作などで知られるヴァン・ダイク・パークスらも参加して雰囲気たっぷりの音楽を紡ぎだすバンドをバックに歌っている。マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフなどのどすの利いた声のブルース・ミュージシャンと比べると声質が軽く、ディランほどクセの強い声でもなく、全体に地味な感じではあるが、聴くほどに味わい深い。ところどころ音をはずしもするが、それもまた味わいのうちだ。