恐怖の達人プリーストリーの‘怪奇版すべらない怖い話’第2弾「船乗り編」。
★★★★☆
小さい頃から怪奇小説をこよなく愛する著者が好評の前作に続いて著した怪奇ファンの期待を裏切らない「怖い話」シリーズ第2弾です。本書も前作の物語の構成と同じく最初と最後の大きな謎めいたお話の間に9つの怖い話が入れられていて合計10編の魅力的な短編小説が味わえます。
激しい嵐の夜に断崖のてっぺんに建つ古い宿屋(オールド・イン)で父親の帰りを待って留守を預かるイーサンとキャシーの兄妹の元へ、全身ずぶ濡れの船乗りと名乗る男がやって来る。男は嵐がおさまるのを待つ間に「怖い話」が好きな兄妹に次々に海の話を聞かせるのだった。
『ピロスカ』若い船乗りリチャードは美しい移民の娘ピロスカを一目見て恋に落ちるのだが・・・・。『ピッチ』船の若者達みんなから嫌われているビリーを弾みで殺してしまったトムは殺人現場を黒猫ピッチに見られてしまう。『イレズミ』日本の長崎の港に降りた若い船乗りが先輩に誘われ刺青屋へ連れて行かれるが・・・・。『ボートに乗った少年』小さなボートに乗った少年を助けてから船で不吉な怪異が起き始める。『カタツムリ』初めはナメていたカタツムリが実はとんでもない怪物だった。『泥』密かに憎みあう双子のならず者兄弟の恐ろしい末路の話。『サル』海賊が乗り込んだ船に突如死が蔓延し最後に恐るべき真相が明かされる。『スクリムシャーの悪魔』港で傷だらけの瀕死の男が倒れているのを目撃した若者が側で拾ったクジラの歯が思いも寄らぬ災厄を連れて来る。『黒い船』恐ろしい黒い船の伝説を船員達に語り終えた若者に血も凍る真実が襲い掛かる。『トリカブト』やっと嵐がおさまった後に作者が周到に仕掛けた二つの恐怖の真相が浮かび上がります。
本書の趣向はカバーのイラストから薄々感づきますが仕上がりには満足出来ます。遂に奥の手を使ったかとは思いましたが、きっと実力派の著者なら新たな恐怖を生み出してくれると信じて次作にも期待しましょう。