おそらく絵画に限らず、本当にモノを好きになるということは、長き人生をかけた真剣勝負のような厳しさが必要なのだろうと思った。しかし私のような凡人にはこの著書を読むことで、画家の葛藤や、良い絵の魅力や、出会いの尊さを容易に知りうるのだ。
流行や世間の動向に流されず、たとえ貧乏しても自分の好みや価値観を信じ続けた度胸の据わった強い生き方にも魅かれる。一方で著者はどこか飄々とした漂白詩人のようだ。それでいてやはり生活もしなければと金策に走り回るユーモラスな表情も見えておかしさが漂う。